Q1)借地権者が、借地権を家族と共同購入し地代を払わない状態で亡くなった場合、相続税はどうなるか

Aは借地権付の建物に妻Bと長男Cの3人で暮らしていました。
地主が底地を売るというので、ABCが資金を出し合い共同名義で底地を購入し、ABCが3分の1ずつ土地持分を所得しました。
その後妻Bと長男Cは、Aから地代を受け取ることなく、かつ従前の借地権が使用貸借であることの届出もしていませんでした。
その後、Aが亡くなり、相続が開始した場合、Aの相続財産について、相続税の課税関係は、どうなりますか。

A1)BCが借地権持分をAから生前贈与されたとして、借地権持分が相続税の課税財産に加算される場合があります。

本事例では、借地権を持っていたのは、Aだけでしたが、地主から底地の所有権をABCで共同購入しています。
借地権を持っていなかったBCとAの土地所有権取得後の法律関係ですが、Aは土地持分3分の1しか所有していないので、残り3分の2の持分を持つBCとの関係では、本来からいえばBCが土地賃貸人、Aが土地賃借人になりますので、AはBCに地代を払わなければならないのです。

けれども、このように親族間で土地賃貸借関係が生じた場合、地代支払いをやめるケースが少なくありません。
親族間なので地代を支払わなくてもよいという処理をした場合に、借地権者の地位に変更がない旨の届出が提出されていれば、借地権は依然として借地人Aに帰属するとして税務上処理されます。

また、この届出書を提出していない場合には、ABCが土地所有権を取得した時点で、Aから妻Bと長男Cに対し、借地権持分3分の2の贈与があったとみなされます。
その借地権の贈与が相続開始3年以内の生前贈与に該当し、妻Bと長男CがAから遺産相続したときは、その借地権の持分3分の2相当額が相続税の課税財産に加算されることになります。

例えば、ABCが取得した土地の相続製評価額が3000万円とすると、Aの持分3分の1の1000万円が相続財産として課税される外、BCの土地取得が同時に借地権持分3分の2(評価額800万円とする)の贈与に該当するときは、相続開始3年以内の生前贈与として相続税の課税財産に加算され、計1800万円が相続税の課税財産になるのです。

 

Q2) 会社代表者が個人名義で契約した借地について、会社が地代を払い資産計上していた場合、会社代表者死亡のときに借地権は、相続財産になるか

1990年にX1が個人Zの土地を借りて地代を払ってきました。2000年以降はX1がY会社の社長をしていたことから、Y会社が地代を払っていました。
X1が2005年に亡くなり、相続が開始したときは、該借地権はY会社の資産として計上していました。
その後2015年にY会社が底地を地主Zから借地権価格を考慮した安価な金額で購入しました。

この度、現社長X2(X1の長男でX1の遺産を全部承継しています。)が亡くなり、相続が開始しましたが、X2の相続人(遺族)が、借地権はX1 のものだったので、X2が借地権もX1から相続しているのではないかと主張しています。
この場合、個人Zから借りていた借地権は、誰に帰属するものとして扱うべきでしょうか。

A2)Y会社に借地権があり、Y会社が、その後底地の所有権を取得したので、Y会社が土地所有者と考えられます。

本事例は、当初土地賃貸借契約をZとX1で締結して地代をX1が支払っていたけれど、その後Y会社が地代を支払うようになったというケースです。
Y会社の地代支払が、X1の負担する地代の立替払いなら、借地権はX1の個人資産になります。
けれども会社が借地権をX1から取得したという認識や地代支払いは自社の借地権の利用料との認識があり、地主Z側もY会社を借地人として認めていた事情があれば、Y会社に借地権があると考えるべきでしょう。

本事例では、先代社長X1の相続税申告において、Y会社に借地権があるものとして申告し、地主ZもY会社から地代を受け取り続け,Y会社名義で地代の領収書を交付していたような事情があれば、借地権はY会社に帰属していたと見るべきでしょう。
その後Y会社が底地所有権を取得したので、Y会社が土地の完全所有権者となります。

 

Q3) 借地権付建物で店舗を個人経営していたが、借地の一部が収容された時に借地権なしとされた場合、当該店舗経営者の相続税では借地権はどうなるか

甲は、50年前から10年後との更新で宗教法人から借地していました。
該借地で飲食店を経営していましたが、5年前に借地面積の10分の1が道路拡張のため収用されましたが、この収用の時には借地人甲に対して保証金の支払いがありませんでした。
収用にあたり「借地権がない」との処理がされたからでした。甲が亡くなり、相続が開始した場合、相続税申告において、借地権の申告をすべきでしょうか。

A3) 建物(飲食店)所有を目的とする土地賃貸借ですので、借地権について、相続税の申告が必要です。

建物所有を目的とする土地賃貸借契約で、契約期間中に地代を支払っている場合、その地域に取引慣行があるかどうかにかかわらず、借地借家法の適用があり、借地権者として保護が受けられます。
本事例で、借地の一部が収容されましたが、借地人は保証金の受け取れなかったわけですが、収用において借地権がないという処理をされたからといって、借地権全体がないことにはなりません。
収用手続とは切り離して考えるべきです。

本事例の甲が、地代を払って宗教法人の土地上に建物を所有し飲食店を経営していた以上、借地権が相続税の課税対象になります。

監修者

氏名(資格)

小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
借地権に限らず、ある財産が被相続人に帰属して相続税の課税財産にすべきものかどうか、問題になるケースが少なくありません。
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