相続税や贈与税の税理士報酬の算定方法は?

以前は、税理士会の報酬規程がありましたが、現在は廃止され、各税理士が自由に料金を定めることになっています。
統一料金はありませんので、同じ案件でも、どの税理士に依頼するかにより、支払う税理士報酬額に差異が生じます。
値引き交渉、支払い条件の交渉もできますが、難しい案件の場合(例―申告期限が迫っている、税務調査の心配がある等)、費用の点だけで税理士を決めるのは、リスクがあります。

相続税申告を、税理士に依頼した場合、税理士報酬は基本的に手間賃ですので、税理士の標準的な作業量は、遺産総額に比例するところが多いことから、概ね遺産総額の0.5%~1.0%が相場と言われています。

その報酬算定のパーセンテージが、遺産総額が大きい場合は低めになり、遺産総額が少ない場合は高めになります。
また、作業量が増加しそうな場合は、別途費用を請求することが多く、一般的には以下のような事由があると、追加請求が行われることが多いです。

➀遺産である土地の数⇒数が複数になると別途費用請求されることが多いです。
➁非上場株式⇒株式価値算定について、別途費用請求されることが多いです。
➂相続人の数⇒人数が多くなると別途費用請求されることが多いです。
➃申告までの作業期間⇒申告期限が迫る時期の依頼だと別途費用請求されることが多いです。
➄税理士法33条の2の書面を作成添付だと別途費用請求されることが多いです。
➅延納や物納の場合、別途手続書類が必要なので、別途費用請求されることが多いです。

相続税の申告の税理士報酬の相場は?

概ね遺産総額をベースに基本報酬が定められていて、遺産内容等により追加料金が発生するのが一般的です。
以下が標準的な基本料金です。

遺産総額報酬
5000万円未満25万円~40万円
7000万円未満35万円~60万円
1億円未満50万円~70万円
2億円未満70万円~100万円
3億円未満90万円~150万円

(標準的な加算料金)

➀土地の評価⇒土地1ヶ所あたり5万円~10万円の追加料金
➁非上場株式の評価⇒1社について15万円~25万円の追加料金
➂相続人の数⇒5人以上の大人数の場合に基本報酬の10%~20%を加算
➃申告期限までの期間⇒申告期限まで3か月以下の場合に基本報酬の10%~20%を加算
➄その他、資料取り寄せや訪問調査は、実費・日当の請求が一般的

注意点

相続税申告の依頼では、遺産の評価そのものを依頼しているので、遺産の評価額は依頼時には、おおよその見込み額であり、評価額未確定の状態です。
遺産額で報酬を定めているときは、通常は税理士が後日評価した遺産額になることが多いようです。
また土地の評価数であれば、例えば自宅の横の私道に権利が見つかった場合、自宅の一部を駐車場にしている場合等については、税理士事務所により数え方が異なるので、確認されることをお勧めします。

旧税理士業報酬規程における報酬規定は?

以下の税務代理報酬と税務書類作成報酬から算定されました。

税務代理報酬

基本報酬額10万円に、次の基準による報酬額を加算する。

遺産の総額報酬額
5,000万円未満200,000円
7,000万円未満350,000円
1億円未満600,000円
3億円未満850,000円
5億円未満1,100,000円
7億円未満1,350,000円
10億円未満1,700,000円
10億円以上1,800,000円
1億円増すごとに10万円を加算

(追加報酬)

共同相続人が1人増すごとに10%相当額を加算
財産評価等が著しく複雑なときは、基本報酬額を除き、100%相当額を加算可(物納・延納の報酬規程も別途あり)

税務書類作成報酬

上記税務代理報酬の50%相当額

税理士への成果報酬は?

相続税申告自体で利益を得るものではないので、基本的に成果報酬はあり得ません。
しかし、他の税理士事務所が行った税務申告について、還付の請求を行うとか、税務調査等に立会い交渉を行う場合、一定の成果が確認できたときは、その成果に対して一定の割合で報酬を得るケースがあります。
その場合の報酬は、成果によって得た財産的利益の20%~30%程度であることが多く、そのパーセンテージは、利益が少額であれば割合が高く、利益が高額であれば低めに設定されているのが一般的です。

贈与税申告の税理士報酬の相場は?

概ね贈与額をベースに基本報酬が定められていて、遺産内容等により追加料金を請求するのが一般的です。
また、遺産の内容による加算は相続税と同一としているケースがほとんどです。

贈与額報酬額
1,000万円まで3万円~4万円
3,000万円まで8万円~12万円
5,000万円まで10万円~20万円
5,000万円超12万円~

(追加報酬)

① 贈与した土地や非上場株式の評価について、相続税と同様の追加料金
② 相続時精算課税、贈与税の配偶者控除、住宅資金の非課税、教育資金の非課税等
の手続対応について5万円~15万円が加算

財産評価?相続・贈与にも関係してくるポイント

1.土地評価の留意点

土地評価を行う場合には、一般的に現地調査又は所轄の役所に赴く必要がありますので、時間等に余裕が必要です。
土地の評価の基礎となる路線価は、毎年7月第一月曜日に公表されます。

例えば、1月に相続が発生しても、相続財産の価額が確定するのは、相続があった年の7月以降となり、相続税申告書の提出もそれ以降となります。
また、1月に土地贈与をしてしまいますと、贈与税額も7月にならないと分からず、不安な日々を過ごすことになります。

2.非上場株式の留意点

事業承継のための贈与・相続については納税猶予の特例があります。
この場合、事前に都道府県知事の認定を受ける必要があり、相続開始後8か月以内に所定の申請を行う等の要件があります。

3.相続税と贈与税で異なるケース

土地建物と住宅ローン等の抵当債務を相続した場合は、土地建物の相続税評価額から抵当債務を差し引いた金額が課税対象となります。
負担付贈与(住宅ローン等の抵当債務付土地建物の贈与)の場合、贈与税の場合は土地建物の時価から抵当債務額を差引計算した金額となります。

これは、一般的に土地の相続税評価が時価より安いため、贈与を恣意的に利用できなくするためのようです。
建物の評価は、相続税では一律に建物の固定資産税評価額が適用されます。
贈与税の場合は、建物の建築直後や事業用資産で、建物の固定資産税評価より建物の帳簿残高が高い場合などは、高い方の金額を採用するように、税務署から指摘されます。

税理士報酬の考え方

税理士報酬は高いよりは安い方が望ましいですが、以下の点についても注意するようにしてください。

① 相続が発生した場合は、相続税申告以外にも不慣れな諸手続(各種届出、名義変更・解約換金等の手続)が多く発生します。
必要書類の収集等、必要な作業は聞き出し、安価で関連諸手続を依頼できるか等も確認してください。
② 相続税申告の作業をしていると、先代(祖父母)の名義の遺産が見つかったりもします。作業中に二次相続が発生したり、連絡が取れない相続人や未成年の相続人もいたりします。
その対応処理等も含めて依頼できるかどうかも確認する必要があります。
③ 税理士業は、通常土日祭日は休みであり、一般の企業とほぼ同じスケジュールで活動しています。
会社を休んで打ち合わせができる人は稀ですので、土曜日や夜間の面談ができるかどうか、メール等も含めて連絡が取りやすい事務所かどうか、も、税理士の選定基準にされた方が良いと思います。

相続に強い税理士に相談?

どこの税理士事務所等のホームページでも、「相続税に強い税理士が良い」とか「当事務所は相続税に強い」などと表示されています。

相談者や依頼者が期待する「相続税についての強さ」とは何なのでしょうか?
以下のような事由が考えられます。

1.不安なことが多いので細かな相談に対応してくれること

この場合は実際に税理士に会ってみて、いくつか質問をされてみれば、おおよそ判ると思います。
実績がある優秀な税理士でも、忙しくて余り相手にしてくれなければ、依頼する意味がありません。

2.税務調査を避けたい

相続税の税務調査において、申告書に記載された財産の評価方法等は、ほとんど問題にされません。
税理士の技量があるから、税務調査を受けないで済むわけではありません。

しかし、相続税申告業務をきちんとしているとの評価を税務署で受けている税理士であれば、税務調査を受ける可能性が低くなります。
もっとも相続税課税財産のグレーな部分について、相続税を払う形で申告しても、税務署から指摘を受けませんので、そのような意味で税務署に弱い税理士が強い税理士に見えることもあります。したがって相続税課税財産のグレー部分についても丁寧に対応方法を説明できる税理士を選ぶことを推奨します。
相続税の税務調査のポイントは、主に相続税課税財産を相続税申告書に全部出したかどうかですので、余分な相続税を支払うことなく税務署から申告漏れの指摘を受けない申告をしてくれる税理士、そして万一税務調査となっても納税者側に立って税務署と対峙してくれる税理士が、良い税理士なのです。

3.相続税額が安い

税法及び関係法令通達の規定は、どの相続であっても同じく適用されます。「強い税理士なので、相続税が安くなります」というわけではありません。
もっとも土地の評価をキチンと算定しない税理士も稀にいますので、払わなくてもよい税金を払わされるケースがないわけではありません。安い報酬で修正申告ありきの手抜きの相続税申告をする税理士も稀にいます。
「相続税に強いから税金を安くできる」等の話をする税理士は避けることを推奨します。

相続に強いは相続税申告の業務に精通していて経験も豊富な税理士なのでしょうが、広告宣伝だけでは、「相続税に強い」税理士かどうかが、素人には判別しにくいのが現実です。

まとめ

税理士報酬の基本的な料金体系は、税理士事務所ごとにインターネット等で公開されています。
これまでの説明を踏まえ、妥当な金額と思えること、依頼の追加料金・作業内容等を確認することが必要です。
また、報酬以外の話しやすい・聞きやすい・説明が分かりやすい等の観点も含めて判断されることを推奨します。

監修者

氏名(資格)

小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
良い税理士は見た目だけでは解りません、当事務所は、無料相談を行っているのでご自身のお考えに合うかどうか相談ら含めて検討してみる事をお勧めいたします。