遺産分割のやり直しと課税関係

(事例1)

甲が亡くなり、相続人乙丙丁で遺産分割協議をして遺産分割協議書を作成しました。
そして甲の不動産は、乙が相続するという遺産分割協議書にしたがい、乙が、甲の不動産の相続登記を司法書士に依頼しました。ところが司法書士は既に当初の遺産分割協議と異
なる乙丙丁3人の共有の保存登記として相続登記をしていました。
その後、司法書士は、乙が相続する内容の遺産分割協議書に基づいて、乙が単独所有とする内容の更正の登記手続きをしました。
この場合、遺産分割のやり直しとして、贈与税の課税対象となるでしょうか。それとも当初の遺産分割協議書のとおりなので、贈与税は課税されないでしょうか。

(回答1)

司法書士の行った登記が「共有物の保存登記としての相続登記」であり、その後の登記が「遺産分割協議が整ったことによる遺産分割の登記」である場合には遺産分割のやり直しにはならないので、贈与税の課税対象になりません。
未分割遺産の状態で、相続税などの延納申請をする場合の担保の提供に際して、相続人固有の財産では担保が不足する又は担保提供財産がないというときに遺産を担保提供しなければならないという場合に、共有物の保存登記としての相続登記が行われます。
このような場合に、「共有物の保存登記としての相続登記」を法定相続分割合により行い、担保を提供することとなります。その後、遺産分割が確定した時点で、先にした「共有
物の保存登記としての相続登記」を変更する「遺産分割協議が整ったことによる遺産分割登記」を行います。
この「遺産分割協議が整ったことによる遺産分割の登記」の場合には、その登記に基づく財産は、相続による財産取得となります。
これに対して、当初有効に成立した遺産分割協議により作成された遺産分割協議書に基づき「遺産分割による相続登記」がされ、その後当初の分割協議内容と異なる登記がされた場合には、遺産分割のやり直しとなります。
この遺産分割のやり直しによって、相続人間で相続財産の再分配が行われた場合においては、相続税法の規定の適用に当たっては、その再分配によって取得した財産は、遺産分割により取得したことにはなりません。それぞれ相続人に帰属した固有財産を無償で授受したとして贈与税の課税対象になります。

(事例2)

Aが亡くなり、相続人BCDの間で協議し、遺産分割協議書を作成しました。
Aの不動産は、遺産分割協議書の内容にしたがい、Bが単独で相続することになり、Bは司法書士に依頼して単独相続の登記をしました。
その後、Bが相続登記した不動産の一部を、Cが取得を希望し、司法書士に登記手続を依頼したところ、司法書士は贈与を登記原因としてCへの不動産持分一部移転登記をしました。
この持分移転登記について、贈与税は課税されますか当初の遺産分割協議に瑕疵があり遺産分割協議が無効だった場合は、どうなりますか。

(回答2)

共同相続人間において遺産分割協議により相続する内容が確定し、これに基づき取得した財産は、共同相続人が相続により取得した財産として相続人各人の固有財産として帰属することになります。
共同相続人各人に、一旦遺産分割によって具体的に帰属した財産を、遺産分割のやり直しとして再分配した場合には、一般的には、個人の財産を自らの意思により処分することになりますから、その意思に従った無償による財産の移転、つまり贈与税の課税対象となります。

ただし、当初の遺産分割協議に「瑕疵」があった場合は、違います。
例えば、当初の遺産分割協議に錯誤・強迫・詐欺があった場合、遺産分割協議書が偽造だった場合、取得した財産が被相続人のものでないことが訴訟により確定した場合等、やむを得ない事情によって、その遺産分割協議が、無効または解除または取消された場合などにおいては、再度遺産分割協議をする必要があります。

 

相続人と相続分

(事例)

被相続人の相続人関係者は次のとおりです。
この場合の民法における相続人及びその法定相続分・代襲相続分と相続税法における法定相続人及び法定相続分・代襲相続分は、どうなりますか。

(回答)

法において、法定相続人の地位にある者が、相続の開始後3ヶ月以内に相続を承認した場合または3ヶ月以内に意思表示をせずその期間を経過した場合には、単純承認したものとみなされます。
被相続人の法定相続人となる者は、血族相続人及び配偶者相続人とされており、血族相続人については、第一順位が被相続人の子及びその代襲相続人、第二順位が被相続人の直系尊属、第三順位が被相続人の兄弟姉妹及びその代襲相続人、配偶者相続人は被相続人の配偶者です。

被相続人の子及び兄弟姉妹については、死亡、欠格または廃除に該当した場合には、代襲相続が認められていますので、被相続人の子については、孫、曾孫、玄孫が代襲相続人となり、兄弟姉妹については、その者の子(被相続人から見ると甥、姪)に限り代襲相続人となります。
事例のケースでは、亡長男の子XとYは、亡長男の代襲相続人の地位にありますが、Yが相続放棄をしていますので、代襲相続人としての相続人になるのはXだけということになります。

また、被相続人の子については、実子の他、養子縁組により子となった法定血族も含みます。事例のケースでは、亡長男の妻Z、子X及びYは被相続人の養子ですが、Yは相続を放棄していますので、亡長男の妻Z及び子Xが養子として相続人となります。

相続人となる子の相続分については、嫡出子及び婚外子の区別なく平等とされています。
これは、平成25年9月4日の最高裁判所大法廷の決定により、婚外子(非嫡出子)の相続分と嫡出子の相続分は同じとする判断がなされたからです。

事例のケースでは、亡長男、長女A及び婚外子B並びに養子X、Yの相続分は等しいことになります。
身分関係が重複する相続人、例えば代襲相続人と養子、配偶者と兄弟姉妹の相続分については、次のとおりとなります。
養子と孫で代襲相続人の身分をもっている場合には、双方の相続分を取得するとされています。
事例のケースでは、XとYは、被相続人甲の養子としての相続分と代襲相続人(亡長男の子)としての相続分を取得します。
なお配偶者と兄弟姉妹の身分をもっている場合には、配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得しないとされています。

1 民法における相続人及びその法定相続分・代襲相続分

長女 A   1/5
亡長男妻Z  1/5
婚外子B   1/5
孫(養子)X 1/5+1/5=2/5

2 相続税法における法定相続人及び法定相続分・代襲相続分

相続税法において、法定相続人とは「被相続人の民法第2編第2章(相続人)に規定する相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)をいいます。
民法で相続人の資格を認められた者を法定相続人といい、これらの法定相続人のうち相続を承認した者が、実質的な相続人となります。
この関係を図でしますと、以下のとおりとなります。

事例のケースにおける法定相続人は、相続放棄したYがその放棄をしなかった場合には、相続人になります。そうしますと、相続を承認したA、E、S及びXと相続を放棄したYが法定相続人となります。
そして、これらの者の法定相続分及び代襲相続分は、法定相続人を基準として次のとおり計算します。

長女  A  1/6
亡長男妻Z  1/6
婚外子 B  1/6
孫(養子)X 1/6+1/6×1/2=1/4
孫(養子)Y 1/6+1/6×1/2=1/4

監修者

氏名(資格)

小林 幸与(税理士・弁護士)

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