(Q1)土地の評価について小規模宅地等の減額特例があると聞きました。その内容を教えてください

甲医療法人は、該医療法人の理事長乙が所有しているA土地の上に、甲医療法人が病院を建てて運営しています。
理事長乙が亡くなり、相続が開始した場合、その相続税の計算上、病院が建っているA土地の評価について小規模宅地等の減額特例があると聞きました。
その内容と留意点について、説明して下さい。

(A1)小規模宅地の説明と適用要件

 

1、小規模宅地等の減額特例について

理事長乙個人が所有するA土地を甲医療法人に貸付け、A土地の上に甲医療法人が病医院を建てて運営している場合、及び理事長乙所有のA土地の上に乙が病医院用建物を建築し、その建物を甲医療法人に貸付けている場合には、理事長乙に相続が開始した時、一定の要件を満たすことにより、A土地が「特定同族会社事業用宅地等」に該当するものとして、「小規模宅地等の評価減額特例」の適用を受けることができます。
具体的には、当該宅地等が特定同族会社事業用宅地等に該当すると、当該宅地等の面積400㎡までについて、当該宅地等の相続税評価額が80%減額されることになります。

例えば、理事長乙所有のA土地の面積が400㎡で、甲医療法人が運営する病院が建っていて、A土地の路線価を基に相続税評価額を計算したところ2億5000万円だったという場合、A土地が「特定同族会社事業用宅地等」に該当すると400㎡まで80%の評価減がされますので、下記の計算のとおり、A土地の相続税評価額が5000万円になります。

2億5000万円×80%=2億円(減額される金額)
相続税の課税対象額:2億5000万円-2億円=5000万円

 

2、特定同族会社事業用宅地等に該当するための貸付の形態

理事長乙(被相続人)所有の土地が一定の要件を満たすことにより、特定同族会社事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の減額特例の適用を受けることができる具体的な貸付の形態は、以下のとおりです。
(1) 理事長乙個人が所有している土地を甲医療法人に貸付けし、甲医療法人が病医院用建物を建築所有している場合
(2) 理事長乙個人が所有している土地の上に、理事長乙が病医院用建物を建築所有し、その建物を甲医療法人に貸付けている場合

 

3、特定同族会社事業用宅地等の適用要件

「特定同族会社事業用宅地等」とは、被相続人等の事業用宅地等のうち、次に掲げるすべての要件に該当するものをいいます。

(1)被相続人等(Q1の理事長乙)が必要な要件について

➀理事長乙(被相続人)が不動産を医療法人に対し「相当の対価」を得て「継続的」に貸付け(賃貸借)していること。
➁理事長乙(被相続人)及びその被相続人の親族その他その被相続人と特別の関係がある者が医療法人の出資の10分の5超を所有していること。

(2)「相当の対価」で「継続的」に貸付とは?

不動産の貸付は、理事長乙が医療法人から相当の対価を得て、継続的に貸付けることが必要となります。
この場合、「相当の対価」の判断については、地代や家賃から固定資産税・減価償却費その他の必要経費を差し引いて相当の利益がでる場合であれば問題はありません。
なお、地代については、「相当の地代(原則として、土地の自用地評価額の過去3年間の平均×年6%程度の地代)」や「通常の地代(その地域における通常収受される地代または路線価等を基に計算した底地(賃宅地)の過去3年間の平均×年6%)」であれば相当の対価という要件は満たしていると考えます。

また「継続的」とは、貸付開始時点から相続開始時点までの貸付期間の長短ではなく、土地・建物の賃貸借契約において、その賃貸借期間が相当期間継続して行われることが予定されていることを意味します。

(3)対価が無償の場合の取扱いについて

理事長乙が不動産を甲医療法人に対して無償(不動産の固定資産税相当額までの地代・家賃の支払いがされていた場合を含みます。)で使用させていた場合には、使用貸借になりますので、小規模宅地等の評価減特例の適用はありません。

(4)出資割合10分の5の判定時期について

被相続人及びその被相続人の親族その他その被相続人と特別の関係がある者が、医療法人の出資の10分の5超を所有していることが要件とされています。この出資割合10分の5超の判定時期は、相続開始後や相続税の申告期限ではなく、「相続開始直前」で行います。

(5)理事長乙の相続人が必要な要件について

➀甲医療法人の事業の用に供されている宅地等を相続又は遺贈により取得した親族のうちに、相続税の申告期限において、その甲医療法人の役員である者がいること

なお相続又は遺贈により宅地等を取得(一部取得でもかまいません。)した親族は、被相続人(理事長乙)と生計が別であってもかまいません。
また、その親族が、相続又は遺贈により医療法人の出資を取得することも要件になりません。

➁その宅地等を取得した上記➀に該当する役員である親族が、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その宅地等が相続税の申告期限まで引き続き甲医療法人の事業の用に供されていること

(6)相続税の申告期限までに、甲医療法人の解散を総会で決議した場合や、賃貸料の支払いをやめて無償にした場合、また、宅地等を取得した者が売買契約を締結したような場合には、特定同族会社事業用宅地等(400㎡まで80%の評価減)に該当しないことになります。

※但し200㎡まで50%評価減になる可能性があります。

 

4.持分の定めのない医療法人への適用

持分の定めのない医療法人は出資概念がないため、特定同族会社に該当することはありません。
したがって小規模宅地の評価減特例の適用はありません。

 

(Q2)病院敷地として使用していますが、以下の条件の相続が開始された評価額を教えてください

丙医療法人では、理事長丁所有のB土地を賃借して病院敷地として使用しています。
理事長丁に対しては権利金の支払はしておらず、通常の地代を支払っています。
また、所轄税務署に対し「土地の無償返還に関する届出書」を提出しています。
理事長丁が亡くなり、相続が開始した場合のB土地の評価はどのようになりますか。

(A2)相続が開始された評価額と無償返還届出書の提出

1、無償返還の届出とは

建物の所有などを目的として土地の賃貸借契約を締結する際、借地権利金の授受の慣行のある地域においては権利金を支払うことにより土地の利用権を取得することになります。
したがって、この土地を地主に返還する際には、相当の対価により借地権の返還がされることになります。
借地権利金を支払わないで土地の賃貸借契約が行われた場合には権利金相当額について受贈益の認定課税が行われることになります。

けれども、地主が医療法人の理事長で、そこに、医療法人が病院を建設しようとする場合には、借地権利金を支払わない代わりに、将来土地を無償で返還するという契約を取り交わす場合があります。
このような場合には、賃貸借契約書に無償返還の定めを明示し、その旨を地主(理事長)と借地人(医療法人)が連名で納税地の所轄税務署長に届出することにより権利金の認定課税が行われないこととされています。
この場合の届出を「土地の無償返還に関する届出書」といいます。

2、賃貸借契約の場合について

(1)「賃貸借契約」締結+「無償返還届出書」提出理事長丁所有のB土地の上に医療法人所有の建物を建て病院として使用する場合、丙医療法人が理事長丁に対して通常の地代など相当の対価を支払う場合、この契約は「賃貸借契約」となります。

そして権利金の授受慣行のある地域において、権利金の授受をしない場合には、権利金の認定課税がされないように無償返還届出書の提出を行うのです。

(2)B土地の相続税評価

上記(1)のような賃貸借契約がされた土地で、無償返還届出書の提出がある場合には、その土地の評価は、「自用地評価額×80%」とされます。
一定の要件(Q1参照)を満たせば、小規模宅地等の評価減特例の対象となり「特定同族会社事業用宅地等」に該当するものとして400㎡まで80%の減額が可能となります。

例えば、B土地(面積400㎡)の自用地評価(相続税評価)が2億円とします。
B土地が賃貸借され、無償返還届出がされていれば、B土地の相続税評価は、下記計算により1億6000万円になります。

2億円×80%=1億6000万円

小規模宅地の評価減特例の適用があれば、下記計算により、B土地の相続税評価額は、3200万円と大幅に下がります。

1億6000万円-(1億6000万円×80%)=3200万円

3、使用貸借契約の場合

(1)「使用貸借契約」+「無償返還届出書」提出

理事長所有の土地の上に医療法人所有の建物を建て病院として使用する場合、医療法人が理事長に対し概ね固定資産税程度までの地代を支払うか、又は、地代を一切支払わない(無償)場合があります。
この場合の土地利用関係は、税務上「使用貸借契約」とされます。
また、権利金の授受慣行のある地域において、権利金の授受をしない場合には、権利金の認定課税がされないように無償返還届出書の提出を行います。

(2)土地の相続税評価

上記(1)のような使用貸借契約の対象となった土地がある場合には、その土地の評価は、被相続人の事業用宅地等には該当せず、「自用地評価そのまま」となります(借地権等の権利に対する減額等は一切ありません。)

監修者

氏名(資格)

小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
良い税理士は見た目だけでは解りません、当事務所は、無料相談を行っているのでご自身のお考えに合うかどうか相談ら含めて検討してみる事をお勧めいたします。