取得割合についての定めがない保険金額の取得割合に関して

Q1 被相続人甲が亡くなりました。甲の死亡保険金の受取人は保険契約では「相続人」とされていて、その取得割合についての定めがありませんでした。
甲の法定相続人は妻Aと長男B長女Cの3人です。この場合、各相続人が取得する保険金額はどうなりますか。

Four question cases of inheritance tax_1

A1  被相続人が被保険者の生命保険契約で、被相続人の死亡により死亡保険金が支払われる場合に、当該保険契約に定められた保険金受取人に対して保険金が支払われます。

保険契約で保険金受取人を「相続人」と定めた場合、相続人が複数存在するケースについて、各相続人の保険金取得割合を各保険契約書で定めるケースがあります。
保険契約で定めていないケースでも保険約款で各相続人の取得割合を定めていることが、少なくありません。
もっとも各保険契約においても、保険約款においても、何ら定めがない場合が問題です。

受取人が相続人とされ、その受取割合が定められていない場合の相続人が取得する保険金の割合については、最高裁の判例(平成6年7月18日判決)があり『保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の相続人と指定した場合は、特段の事情のない限り、当該指定には、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれているものと解するのが相当であり、このような場合に、数人の相続人がいるときは、特段の事情のない限り、民法427条にいう「別段ノ意思表示」である相続分の割合によって権利を有するという指定があったものと解すべきであるから、各保険金受取人の有する権利の割合は、相続分の割合になる。』とされています。

したがって、質問のケースは、生命保険契約による死亡保険金が遺産分割の対象とはなりませんが、各相続人が取得した死亡保険金額について、相続税で課税されます。
但し、「500万円×法定相続人の数」までの金額は非課税です。本問のケースでは、相続人が3名ですので1,500万円までの死亡保険金は課税されません。

 

代襲相続人が絡む保険金額の取得割合に関して

Q2 被相続人Aが死亡しました。この死亡保険金の受取人は、Aが亡くなる少し前に亡くなった長男Bでした。
なお、被相続人Aの法定相続人は、妻Cと孫D(亡長男Bの子←代襲相続人)と長女Eです。長男Bの法定相続人は妻FとBの子Dです。
亡くなったBが受取人の死亡保険金は、どうなりますか。

Four question cases of inheritance tax_2

A2 生命保険契約における当事者は、「保険者」「保険契約者」「被保険者」「保険金受取人」です。
その保険契約による保険事故が発生すると保険金受取人に対して保険金が支払われます。
この場合に保険金受取人は保険契約者によって指定でき、保険契約後に保険事故が発生するまで受取人を変更することができます(保険法

43条、72条)。また、保険金受取人を遺言により変更することもできます(保険法44条、73条)。

保険金受取人が保険事故発生前に死亡したときは、保険契約者はその受取人変更の手続を行う必要があります。
けれども、受取人の変更手続をしないまま保険事故が発生した場合には、それに関する保険約款の定めがあれば、それに従います。
保険約款の定めがない場合にも、その保険金受取人の相続人の全員がその保険金を取得することとされています
(保険法46条)条

質問のケースでは、長男Bの法定相続人である妻F及び子のDが保険金受取人になります。

この場合の保険金の受取割合について、最高裁の判例(平成5年9月7日判決)があり、『保険金受取人が既に死亡している場合には、その相続人の保険金に対する権利の割合は民法427条(債権債務分割の原則)の規定により平等となる。』とされています。

したがって、妻F及び子のDがそれぞれ2分の1ずつ取得することとなります。この場合の課税関係ですが、Aの死亡に伴う死亡保険金ですので、死亡保険金を取得した妻Fと子DはAに関する相続税の課税対象となります。

 

生命保険金の相続税申告に関して

Q3  私は、夫の死亡によって死亡保険金を父から貰いました。この生命保険金は、夫が大学卒業のときに、父が契約してくれたもので、その後、父は生命保険の契約者名義を、私たちの結婚の時に、夫名義に変更しました。
その後は、その保険契約の保険料は夫が支払っていました。ただし、受取人は父のままになっていました。

保険会社は契約どおり父に保険金を支払いましたが、父は「この保険金は、亡くなった息子の妻子が受け取るべきものだから、あなたと子供で保険金を受け取って、相続税の申告をしなさい。」といっています。
どのようにしたらいいですか。

A3  保険金は通常、保険証券に記載されている保険金受取人が取得しますが、現実には保険証券に記載されている保険金受取人と現実に保険金を取得した者が異なる場合があります。
このような場合には、契約上の保険金受取人からその保険金を譲られた子などに贈与されたことになります。
しかし、保険金受取人は、形式的に保険証券に記載されている者をいうのか、それとも現実の受取人をいうのかが問題になります。

契約上の受取人以外の者が保険金を取得した場合に、現実に保険金を取得した者が、その保険金を取得することについて相当の理由があると認められたときは、その者を「保険金受取人」として相続税の申告をすることが、認められています(相続税基本通達3-12)。

ここでいう相当の理由とは、次のような保険金受取人の変更手続きがされていなかったことにつき、やむを得ない事情があると認められる場合をいいます。

具体的には、次のようなケースです。

イ、夫が独身時代に本人以外の親族を保険金受取人とする生命保険契約を締結していたが、保険金受取人を妻に変更しないまま夫が死亡した場合に、保険会社から支払われた保険金を夫の親族が取得せず妻が取得し、妻を保険金受取人とした相続税の申告があったとき

ロ、 夫が妻を保険金受取人とする生命保険契約を締結していたが、妻と死別して再婚後、受取人変更を忘れたまま死亡した場合に、保険会社から支払われた保険金を後妻が取得し、後妻を保険金受取人とした相続税の申告があったとき事例のケースは、イのようなケースに該当し、相当の理由があると認められるので、妻と子で申告することが認められると考えます。

また、相続人である配偶者と子が保険金を取得しているので、保険金の非課税制度の適用を受けることができます。

 

会社がかけていた生命保険の課税はどうなるのか?

Q4  被相続人甲は、死亡退職しました。甲の勤務先であった乙会社が、某生命保険会社と契約していた保険契約により死亡保険金を取得しました。
乙会社の得た死亡保険金の課税はどうなりますか。

A4  相続税において、被相続人の死亡を原因として生命保険会社から死亡保険金を取得した場合には、その保険契約に係る保険料を誰が負担していたかにより課税関係が決まります。

その保険契約に係る保険料を被相続人甲が負担していた場合には、死亡保険金として相続税の課税対象となります(相続税法3条①一)。
被相続人の勤務先の乙会社が保険料を負担していた場合には、乙会社がその保険契約に係る保険金を死亡退職金として支給する目的であった場合を除いて、乙会社が負担した保険料による経済的利益に対する所得税課税との関係から従業員たる被相続人が保険料を負担していたものとして取り扱うこととなっています(相続税基本通達3-17)。

したがって、従業員である被相続人の死亡を保険事故として保険金を取得した場合には、「受取人が相続人の場合にはみなし相続」、「相続人以外の者が受取人の場合にはみなし遺贈」となります(相続税法3条本文)。

この場合において、相続人が取得した保険金ついては、相続税の非課税の適用があります(相続税法12条①五)。
したがって、質問のケースでは乙会社のみなし遺贈として相続税の課税対象となります。

なお、被相続人甲及び乙会社以外の者である個人が保険料を負担している場合には、保険金受取人が保険料負担者から贈与により取得したものとみな
されて贈与税が課税されます。

監修者

氏名(資格)

小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
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