相続税の税務調査の現状と対策について

相続税の税務調査とは、どういう手続なのでしょう?

(1)税務調査は、税務当局の裁量で行われ、調査の方法には、いくつかのパターンがあります。

その一つに「税務署に来署を求めて是正させる」という方法があります。
この方法は、あくまで税務調査 の一環として行われるもので、是正方法
として修正申告書の提出があった場合、過少申告加算税が賦課されます。
これに対し、税理士法33条の2に定める書面を添付したことによって 税務調査の実施前に行われる関与税理士との意見聴取における質疑などだけで、修正申告書が提出されたときには、過少申告加算税が賦課されないと解釈されています。

(2)税務調査のほかに、行政指導の一環として、提出された申告書の計算間違い、記載漏れ、法令の適用誤りなどの誤りがあるような場合、納税者側に自発的な見直しを要請し、必要に応じて修正申告書の提出を要請する場合があります。

このような行政指導により修正申告書を提出した場合、過少申告加算税が賦課されません。
ただし、延滞税を納付すべき場合がありますし、当初の相続税申告が期限後申告ですと無申告加算税として原則納付額の5%が賦課されます。

(3)一般的に相続税の税務調査というと、納税者の自宅に出向いて行う「実地調査」を指します。
「実地調査」は、通常の場合、以下の事項を通知して行われますので、この通知があったら、納税者は関与税理士との間で調査に対する対応方を相談しましょう。

ⅰ)実地調査を開始する日時
ⅱ)調査を行う場所
ⅲ)調査の目的
ⅳ)調査の対象となる税目
ⅴ)調査の対象となる期間
ⅵ)調査の対象となる帳簿書類その他の物件などの事項

(4)相続税の税務調査は、国税局や税務署で収集した資料情報を基に、相続税申告額が、過少であると想定されるものや、申告義務があるにもかかわらず無申告になっていることが想定されるものなどに対し、実施されます。

実地調査には、「一般調査」と「特別調査」があります。特別調査は、一般調査より調査日数が長くなります。

(5)反面調査について

「反面調査」とは、調査対象者(納税者)以外の者に対して実施される税務調査であり、納税者の取引先金融機関や証券会社などに対して行われるのが典型です。
「反面調査」も質問検査権に基づいて行われる調査です。
銀行調査では、相続開始前に引き出された預貯金の移動先、過去に引き出された預貯金等が何に変化したか、家族名義の預貯金の原資はどこから流れたか、といったことを調査されます。

証券会社などの調査においては、証券会社などにおける取引先ごとの管理方法、取引先口座等から株式等の取得原資など名義株(被相続人が親族等の他人名義を借用して取得した株式)の疑いがないか等を調べるようです。

(6)現況調査について

相続税の税務調査のほとんどは、事前の通知をして行われる任意調査ですが、任意調査でも「現況調査」があります。
「現況調査」は、調査先に出向いて、相続財産として経済的価値あるものを調査しますので、現金・家族名義を含む預貯金通帳・株券などの有価証券・不動産売買契約書・印鑑・家の中の書画骨董類などは、求めに応じて提示できるよう用意しておいた方がよいでしょう。

 

1、相続税の税務調査を受けるのは、どういう場合ですか。

国税庁によれば、相続税の年間申告件数は、平成28年度が被相続人ベースで103,043人(相続人数で233,555人)です。これによれば
相続税の税務調査は、申告件数の10%強から15%弱の割合で行われ
ているようです。
税務調査は、国税局及び税務署で収集した資料情報から、相続税申告における遺産額が過少であると想定されるもの、相続税の申告義務があるのに無申告となっていると想定されるものに実施するとされています。
具体的には、以下のような場合などです。

●被相続人が財産を子や孫等の親族名義の預金に変えた(名義預金)が疑われる(贈与と認められない)

例えば、被相続人の生前の収入が毎年1000万円以上あったとか、高額の退職金を貰っていたにもかかわらず、申告された預貯金等の遺産額が少なかった場合、疑いをかけられ易いです。

●被相続人が子や孫等の親族名義を借用して株式を保有している(名義株式)が疑われる。

例えば、収入の少ない子や孫名義で多額の株式が保有されている場合、疑われます。

●被相続人の預金口座から死亡の少し前に一度に多額の預金引出があるのに、相続税申告書に生前贈与とか預け金等の記載がない。
●その他、申告漏れが疑われる事情がある。
●相続税申告が必要ないと思い申告しなかったら、それは誤解で、実は申告が必要だった。

なお相続税申告は、相続人全員で申告する必要がないので、一部の相続人と連絡不能だからということで、申告義務は免れません。
こういうケースで無申告のままですと税務調査の対象となりやすいです。
さらに億単位の遺産相続の場合、税務調査の対象となりやすいですので、相続税申告に精通した税理士に御願いすることが重要です。

相続税の税務調査を事前に知ることができる方法があります。
相続税の申告にあたり、申告を担当した税理士が税務代理権限証書の提出だけでなく、税理士法33条の2に定める書面を添付しますと、予告無しで行われる税務調査でない限り、必ず税務調査の前に、関与税理士に意見聴取が行われます。この意見聴取の結果、税務当局側の疑問点が解消できた場合、関与税理士に対し「現時点では調査に移行しない」旨の連絡があるとされています。

税理士法33条の2に定める書面を添付しての申告ですと、税務調査を受ける可能性が低くなるのです。
相続税申告を税理士に依頼するときには、税理士法33条の2に定める書面を添付してくれるかどうかを、確認することが重要です。
なお税理士法33条の2に定める書面を添付したことによって税務調査の実施前に行われる関与税理士との意見聴取における質疑などだけで、修正申告書が提出されたときには、過少申告加算税が賦課されないと解釈されています。

 

2、相続税の税務調査のための事前対策について

(1)被相続人の財産を、生前(相続開始前)から、把握しておく。

相続税の申告漏れは、相続人が被相続人の財産をきちんと把握できていなかったことが原因のケースがあります。
財産を親族に残したいと考えている方、近い将来相続人になりそうな方は、財産目録を作成しておいた方がよいでしょう。
財産は変動しますので、毎年決まった時期に財産目録の見直しをした方が良いです。

(2)被相続人が生前、預貯金等の財産を移動させるときは、契約書面などの形に残す。

相続税の節税のために、孫等に財産を生前贈与される場合、贈与契約書の作成をして、贈与した財産を受贈者側に管理させることが重要です。贈与税の申告が必要な場合には、贈与税の申告・納税をきちんとしてください。
被相続人の財産を使って、生前、親族名義で預金をしたり、親族名義の保険契約をしたり、親族名義で株式を取得したような場合には、相続開始後に、名義預金・名義株式・名義保険の問題を指摘されないよう注意が必要です。どういう注意が必要なのか、相続税に精通した税理士のアドバイスが必要でしょう。

(3)億単位の遺産相続なら、相続税に精通し経験ある税理士に相談する。

遺産額が億単位ですと、税務調査の対象となりやすいです。
したがって相続税に精通し経験豊富な税理士に依頼することが重要です。このような税理士なら預貯金履歴を5年以上遡って調査した
り、不動産の相続税評価を工夫したり、税理士法33条の2の書面の利用するなど、税務調査があっても心配しなくてよい申告をしてくれるからです。
毎年確定申告を依頼しているからとか、友人や親戚の紹介だからなどの理由で入りされた税理士が頼りになる税理士とは限りません。
相続税に詳しい税理士は20人に1人と言われているからです。

(4)依頼した税理士に被相続人の遺産関係について隠さず話す。

相続税に精通した税理士であっても、依頼者(相続人)が被相続人の遺産調査に協力的でなかったら、キチンとした内容での相続税申告ができません。
税理士に内緒で遺産を隠し、税務調査で見つかったときは、重加算税などの大きなペナルティとなります。

税理士は脱税には協力できませんが、合法的な節税には協力します。
リーガル東京は、相続開始前の節税策、相続開始後の節税策を、ご提案できますので、是非ご相談ください。

 

3、相続税の税務調査を受けた場合の対応策について

(1)相続税の税務調査は、具体的に、どう実施されるか。

税務調査は、事前に相続税申告に関与した税理士に連絡があります。
税務調査の内、「実地調査」は、被相続人が居住していた場所、各相続人の居住している場所で、行われます。相続人全員が一箇所に集められることもあれば、相続人各人が別々の日時場所で調査が行われることもあります。
税務調査に関与する税務署員は、通常2人組で行われ、実地調査は、通常午前10時から昼食を挟んで午後4時頃まで続きます。税務調査は、2日間行われることが多いようですが、1日で終わることもあります。

相続税の税務調査は、財産内容の調査が中心となります。
相続税等の税務調査は、あくまで任意の調査ですから毅然とした態度 で対応すべきであり、不必要な調査を受け入れるべきではありません。具体例で説明します。

➀相続税の税務調査で「金庫の中を見せてほしい」といきなり言われた場合、どう対応すべきでしょうか。

この場合、まず調査したい金庫が被相続人の所有物かどうかを確認します。被相続人の所有物であれば、相続財産なので金庫を見せるべきでしょうが、どうして金庫の中を見せなければならないのか、理由を確認してください。金庫の中を無防備に見せるのではなく、見たいと言った金庫の中に、相続財産(通帳や現金等)が入っていれば、それを自ら取り出して税務職員に提示すればよいと思います。

➁相続税の税務調査で、自宅の各部屋を確認させてほしいと言われた場 合、どう対応すべきでしょうか。

税務調査は、任意の調査ですから、税務職員が何でもできるというわけではありません。この場合、何故自宅の各部屋を確認することが必要なのか、各部屋を確認することが相続税の課税対象となる相続財産の増減につながることになるのか、被相続人が使用していない部屋まで何故見せる必要があるのか等を、きちんと訊ねることが必要であろうと思います。

以上のような対応は、納税者一人では、なかなか出来ません。
そこで頼りになる税理士が必要なのです。

(2)相続税の税務調査は、相続税・国税通則法に精通した税理士に依頼する。

通常は、相続税申告を依頼した税理士が、税務調査に関わります。

しかし相続税申告を依頼した税理士に、相続税の税務調査まで関与させる義務はありません。
相続税申告をしてもらった税理士が、相続税の税務調査においても頼りになる税理士ならば、問題ありませんが、少しでも不安がありましたら、相続税や国税通則法に精通している経験豊富な税理士に、税務調査対応だけ依頼することができます。
知り合いの紹介で税理士に相続税申告をしてもらったけれど、税務調査対応に不安がある、あるいは毎年の確定申告を依頼している税理士に相続税申告をしてもらったけれど、税務調査対応に疑問があるなど、のご事情がある方は、是非リーガル東京にご相談ください。

 

4、相続税の税務調査は、年間何件あって、どういう結果になっていますか。

国税庁の発表によれば、相続税の実地調査(納税者の自宅に赴いて行う調査)の件数は、平成28年度12,116件(平成27年度11,935件)でした。 このうち申告漏れなどがあった件数は、平成28年度が9,930件(平成27年度9,761件)ですから、税務調査対象となった納税者の20%弱は、何の指摘も受けていないことになります。
もっとも申告漏れについて、重加算税を付加された件数が平成28年度1300件(平成27年度1250件)もありますので、税務調査対策が重要です。

東京国税局管内では、相続税の実地調査の件数が平成28年度3,227件(平成27度3,194件)、このうち申告漏れなどがあった件数が平成28年度2,468件(平成27年度2,041件)となっています。税務調査対象となった納税者の25%位は、何の指摘も受けていないことになります。

国税庁によれば、税務調査により申告漏れを指摘されて課税対象となった財産価格は、平成28年度3,295億円(平成27年度3,004億円)です。
東京国税局管内では税務調査により申告漏れを指摘されて課税対象となった財産価格は、平成28年度957億円(平成27年度745億円)です。

申告漏れを指摘された相続財産の内訳は、全国ベースでは、①現金・預貯金等 平成28年度1,070億円(平成27年度1,036億円)②有価証券535億円(平成27年度364億円)であり、金融資産の割合が多いといえます。

実地調査の理由については、国税局及び税務署で収集した資料情報から、相続税申告における遺産額が過少であると想定されるもの、相続税の申告義務があるのに無申告となっていると想定されるものに実施したとされています。