相続税申告を依頼する税理士の選び方について

相続税申告は、どの税理士に依頼しても同じだと思っていますか?

実は、相続税申告は、どの税理士に依頼するかよって結果が異なることがあるのです。
ですから、相続税申告を税理士に依頼しようと考えたとき、どの税理士に依頼すべきかは、重要なことなのです。
もっとも、税理士として登録しているのは、平成29年9月末現在で、全国に7万6935人もおります。これだけいれば、税理士の資格を有するといっても玉石混合であるのは想像に難くないでしょう。
そこで、相続税申告を依頼するのに適した税理士の選び方をご説明します。

1 まず税理士試験の選択科目に注意

そもそも税理士になるには、通常、税理士試験に合格する必要があります。
税理士試験の試験科目は、必修科目が会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)であり、税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)は、選択科目であり、いろいろな税法の中から3科目選択となっています。
つまり、相続税申告に必要な相続税法は選択科目になっていますので、相続税法を勉強せずに税理士試験に合格する人が少なくないのです。

例えば、平成28年度税理士試験においては、選択科目である消費税法の合格者が1104人、法人税の合格者が655人であるのに対し、相続税法の合格者は454人と少ないのです。このような傾向は平成28年税理士試験に限らず、毎年見られるのです。

このように相続税法を学んでいない人でも、他の選択科目により税理士試験に合格できることからして、相続税申告の依頼は、相続税法に詳しい税理士を探したうえですべきです。
もちろん、税理士試験を受験しないでも税理士資格を得られる人(税務署OB・税法に詳しい弁護士など)もいますので、そういう方々は相続税法を受験したかどうかで選べませんので、相続税申告の知識経験を確認することが大切でしょう。

 

2 相続税申告の総件数もチェックポイント

例えば、平成27年中に亡くなった方(被相続人)のうち、相続税申告書が提出された被相続人の数は10万3043人でした。
相続税申告書は、税理士が関与せずに作成される場合があったり、複数の相続人がいる場合にはそれぞれが税理士に相続税申告を依頼する場合がありますので、この数字が直ちに税理士への依頼件数というわけではありません。しかし、仮にそうだとしても全国に約7万人いる税理士の数で割ると、税理士1人当たり1年間に1件か2件程度しか相続税申告をできない計算となります。

このような少ない件数では専門的知識の蓄積は困難ですので、多数の相続税申告の実績を積んだ税理士に依頼をするのが良い方法でしょう。
但し申告件数が多ければ多いほど、良いとは限りません。何千件という申告件数の多さを宣伝する大手税理士事務所がありますが、申告件数の数と申告内容の両方を、できればチェックしたいですね。申告内容の良し悪しは素人には分かりませんが、年間数十件以上の相続税申告を扱っている税理士で、かつ申告内容のポイントや相続税節税策を分かりやすく説明できる税理士なら安心だと思います。
中小の税理士事務所の中には、事務所サイトなどで相続税に関して詳しく説明したり、扱った相続税申告の内容を簡単に紹介しているところがありますので、そういうことを参考にするのも良いと思います。

 

3 相続に強い税理士の特徴

税理士の中にも相続に強い税理士と強くない税理士がいます。
では、相続に強い税理士をどのように見分ければいいのでしょうか。

着目すべきは、相続税の節税策を提案してくれるかという点です。
相続に強い税理士は相続税申告を多数こなしていることから、税務署が納得しやすい節税策について多くの知識・経験を有しています。そのため、依頼者から相続税申告について相談を受ければ、具体的な節税策について提案してくれるはずです。逆に経験が乏しい税理士には具体的な事案に応じた節税策を提案することは困難です。

例えば、相続人が2人で、相続財産に1つの更地が含まれていたとします。更地が2つの道路に接していた場合、路線価が高い方の路線価を採用して土地の課税価格が計算されます。
しかし、更地をそれぞれ1つの道路にしか接しないように2つに分けて、分筆登記をして、相続人がそれぞれの更地を単独相続した場合には、片方の更地については低い路線価を採用にして計算することができるようになります。そのため、相続税額を抑えることができるのです。
分筆登記をして相続するという簡単な節税策ではありますが、相続に強くない税理士(相続法の知識経験の乏しい税理士)には提案してもらえません。

 

4 相続に強い税理士にどうすれば出会えるか

税理士を探す際には、次のような手段があります。

➀知人から紹介してもらう
➁金融機関の従業員から紹介してもらう
➂電話帳や看板、税理士会の名簿などで探す
➃インターネットで検索して探す
➄税理士紹介サイトに依頼する

➀知人からの紹介

知人が紹介してくれていることからして、税理士として一定の水準に達している可能性が高いです。しかし、知人がその税理士に相続税申告以外の税務手続きを頼んでいた可能性もありますし、相続税に強くない税理士がいることを知らない可能性もあります。
また、紹介で得られる税理士の候補はあまり多くないはずです。

➁金融機関の従業員からの紹介

これも①の知人からの紹介同様に相続税に強い税理士にあたらない可能性があります。

➂電話帳や看板、税理士会の名簿などで探す

紹介に頼らないことから、様々な税理士を探すことができます。
しかし、電話帳や看板、名簿では税理士についての情報を深堀りしようとしても、紙面の限界から難しいです。
そのため、候補となる税理士は多数見つかるでしょうが、相続税に強い税理士を見極めるのは難しいでしょう。

➃インターネットで探す

インターネットの活用は、税理士業界でも広がっています。そのため、税理士事務所ではホームページを持っているところが多く、情報発信にも積極的な事務所もあります。
ホームページから得られる情報量は、他の方法で得られる情報に比べて格段に多いです。そのため、インターネットを活用して、事務所のホームページを見ることによって、事務所の特色を掴むことができます。

また、インターネットで事務所や税理士を検索すれば、口コミ情報も多数掲載されています。口コミ情報は真偽の判断が難しいですが、適切に見極めれば有用です。
なお、インターネットで事務所や税理士を探す場合に、検索サイトでキーワードを入れて入力すれば、多くの事務所が結果に表示されます。しかし、上位に表示される検索結果が必ずしも良い税理士であるということはできないので、下位に表示されている税理士も確認し、比較することが大切です。

➄税理士紹介サイトに依頼する

税理士紹介サイトでは、多くの税理士と出会う機会があります。
しかし、税理士紹介サイトは、運用する業者によって質が大きく異なります。
サイト利用者と良質な税理士のマッチングを目指すサイトもあれば、税理士から紹介料を得ることだけが目的のサイトもあります。そのため、利用する際には、税理士紹介サイトの内容を吟味した上で、慎重に判断すべきです。

 

5 相続税申告を依頼すべき税理士とは

相続税申告を依頼するにあたり、単に「申告手数料が安い」という理由で選ぶべきではありません。
相続税申告を依頼するうえで、相続税申告に強い(相続税申告の知識経験が豊富)というのは、最低限の条件です。

他にどのようなことを重視するかは、依頼者の事情によります。
相談時には来所のための移動を伴うので、急な相談でも対応してもらいたい場合には、物理的に近い場所の税理士に頼む方が良いかもしれません。
また、とにかく経験のある税理士に頼みたいということであれば、東京などの都市部で活躍する税理士に頼むのが良いでしょう。都市部の税理士は案件を多くこなす機会があり、また激戦区であるため新規の依頼者に対しても丁寧に対応し受け入れてくれるはずです。

他にも、依頼者が女性であれば相続税に強い女性税理士を選ぶのも良いでしょう。
相続税申告だけでなく相続に関する紛争についての相談も一緒に対応してほしいとなれば、弁護士資格を持っている税理士を選ぶというこだわりもあります。
遺産が基礎控除の範囲を少し超えるくらいなら、費用が高くない相続税に強い税理士を選ぶのもよいでしょう。

このように、ご自身が相続税申告を依頼する税理士に何を求めるか明確にしておくことが大切になるでしょう。
その上で、自らが決めた条件に合う税理士を探すのが一番です。