相続開始前・開始後に相続税を上手に減らす対策とは?

相続税には、相続開始前・開始後に減らす方法がそれぞれございます。
遺産分割が開始されてしまってからでは、相続税が減らせないと思っている方も多いの方も多いのではないでしょうか?

税理士法人リーガル東京では開始前・開始後でも相続税の圧縮をさせていただく提案が可能です、以下の内容の軽減方法を確認いただき、是非ともご相談くださいませ。

■相続開始前の節税方法

1、生命保険を利用して節税

生前にできる相続税対策としてまず考えられるのは、生命保険の利用です。
生命保険の受取金額には、相続税がかからない部分(非課税枠)があるからです。
生命保険の非課税枠は、「500万円×法定相続人全員の人数」分の金額です。例えば、甲が亡くなり、甲の妻、長男並びに長女が相続人の場合、死亡保険金1500万円を長男が受け取った場合、500万円×3人=1500万円までが非課税になり、死亡保険金には相続税が課税されません。

また、相続財産に不動産がある場合、その不動産の路線価・面積等によっては相続税評価額が高くなり、相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を上回ってしまうことがあります。その場合、納税資金不足に備えるために、生命保険を活用することもできます。
死亡保険金は被相続人死亡により受け取ることができる現金であり、同様の資産として預貯金があります。しかし、預貯金は全額相続財産に組み入れられ、課税対象となります。したがって、生命保険を利用することで、死亡保険金に対する非課税枠を利用して現金を得ることができ、納税資金対策としても活用できるのです。

そして、主な財産が不動産であるときなど、相続財産が分割しにくい場合、一人の相続人に不動産を取得させ、他の相続人に支払う代償金を死亡保険金で賄うことで遺産分けを解決できる場合もあり、生命保険は遺産分割方法としても活用できます。
生命保険を利用した個別具体的な相続税対策及び遺産分割方法につきましても、リーガル東京までお気軽にご相談下さい。

 

2、贈与税の配偶者控除を利用して節税

生前にできる相続税対策として、贈与税について、配偶者には一定の要件の下で最高2000万円まで控除が認められる制度を利用する方法もあります。
贈与税の基礎控除が110万円ですので、この方法によれば、110万円+2000万円=2110万円までは配偶者への贈与税がかからないというメリットがあります。

また、通常の贈与であれば、相続開始前3年以内の生前贈与には、さかのぼって相続税が課されるのですが、この贈与の場合は加算の対象から外れることもメリットの一つです。
メリットばかりではなく、一定の要件もありますし、注意すべきこともあります。
贈与税の配偶者控除を受けるための要件は、以下のとおりです。

1)婚姻期間が20年を過ぎた夫婦間の贈与であること。

20年の期間は、正式な婚姻届を出してからの期間であり、同棲期間や婚約期間は含まれず、事実婚関係にある人も含まれません。

2)配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること、または、居住用不動産を取得するための金銭であること。

一般的に、土地や建物の贈与税の評価は、通常、時価よりも低く評価されるため、金銭よりも不動産の贈与の方が、より高額な贈与が可能になり節税効果も高くなります。

3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与によって取得した国内の居住用不動産、または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた人が現実に住んでおり、かつ引き続き居住する見込みがあること。

4)居住用家屋の敷地のみの贈与の場合、居住用家屋の所有者が夫または妻であるか、もしくは、贈与を受けた配偶者と同居する親族であること。

5)無税でも贈与税の申告を行うこと。

暦年贈与を含む2110万円以下の贈与でも、税務署に申告書を提出する必要があり、定められた添付書類も確定申告の期間内に提出する必要があります。

6)同一の配偶者から一生に一度のみ受けること。

例えば、1500万円の不動産を贈与された場合、1500万円分のみが控除となり、残りの500万円を不動産以外の贈与で利用したり、翌年に繰り越したりすることはできません。
また、注意すべきこととして、不動産の贈与については、贈与税はかからなくても、不動産の登録免許税と不動産取得税は別途かかることがあります。
登録免許税は、相続の場合固定資産評価額の0.4%、贈与の場合は2%、不動産取得税は、相続の場合は非課税、贈与の場合は固定資産評価額に対し、土地1.5%、家屋(住宅)3%ですので、有利・不利の判断は、相続税の節税額と贈与にかかる諸経費の比較で決める必要があります。
贈与税の配偶者控除を利用できる場合にあたるのか、また、利用できる場合としても相続した場合より有利なのか不利なのかの個別具体的な判断につきましても、リーガル東京に、お気軽にご相談下さい。

 

3、孫に生前贈与して節税

生前にできる相続税対策として、祖父母から孫へ生前贈与することで、相続税の課税を1回分なくすという方法もあります。
つまり、通常、相続財産を孫世代へ移転させるには、祖父母から子へ相続され、子から孫へ相続されることで、相続税が2回課税されるのですが、祖父母から孫へ直接贈与することによって、相続税の課税を1回分なくすことができるのです。

また、祖父母が、子ではなく孫へ、生前贈与することのメリットは、他にもあります。
祖父母の相続開始前3年以内に子が祖父母から受けた生前贈与については、年間110万円以下であっても、3年以内に生前贈与された財産が相続財産にプラスされて相続税が計算されます。これに対して、孫が受けた生前贈与についでは、孫が代襲相続人である場合を除いて、相続財産に含まれずに相続税が計算されるため、相続税対策になるのです。

ただし、祖父母が孫へ生前贈与するタイミングと金額には細心の注意が必要です。
例えば、祖父母から孫へ、大学4年間の授業料がまとめて一括で渡されていると、税務署から、贈与税の課税対象とされてしまう恐れがあります。
このような事態を避けるためには、例えば、4月に入学金30万円と前期授業料70万円の合計100万円、9月に後期授業料70万円をそれぞれ祖父母の通帳から出金し、出金額を通帳に記帳して証拠を残すなどしておくとよいでしょう。
祖父母から孫への具体的な生前贈与の方法につきましても、リーガル東京に、お気軽にご相談下さい。

 

4、教育資金の贈与の節税

生前にできる相続税対策として、祖父母から孫への生前贈与については、2013年4月1日から2019年3月31日までの間に、一定の要件のもと、1人について教育資金として1500万円まで贈与しても贈与税がかからないという制度を利用する方法もあります。
この制度により、祖父母がある時期に一括で預けた金額を、孫が30歳になるまで、何度でも引き出すことができます。

この制度を利用するためには、信託銀行等取扱金融機関に口座を開設すること、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を納税地の税務署長に提出すること、資金を口座から引き出す際には教育資金に充当したことを証明する書類を取扱金融機関の営業所に提出すること、などの要件もあるので気をつける必要があります。

また、非課税枠の1500万円のうち、孫が30歳になって使い切らなかった金額については、贈与とみなされて贈与税がかかります。
祖父母から孫への教育資金の贈与につきましても、リーガル東京に、お気軽にご相談下さい。

 

5、養子縁組による節税(基礎控除を増やす)

生前にできる相続税対策として、養子縁組をするという方法もあります。
相続税には基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)があるところ、養子は法定相続人になるため、養子縁組をすれば法定相続人の数が増え、基礎控除額が増えることになるのです。
ただし、民法上は養子を何人でも増やすことが可能ですが、相続税法上の法定相続人の数に入れられるのは、実子がいない場合は2人まで、実子がいる場合は1人まで、という制限があります。
また、税務署から「相続税の負担を不当に減少させる意図がある」と判断されたときには、養子の数を法定相続人の数に含めてもらえない可能性があるので、注意が必要です。

例えば、被相続人と同居して面倒をみていた相続人の配偶者など、相続時には法定相続人とならない者に対して、「介護や生活上の面倒をみてくれた者を養子にして、財産を残してあげたい」というような合理的理由があれば、問題はありません。

しかし、遠い親戚の人間や第三者などを養子にする場合には、養子にした合理的理由を説明できるようにしておく必要があります。
相続税法上の法定相続人と認めてもらえる養子縁組ができるかどうかなどにつきましても、リーガル東京に、お気軽にご相談下さい。

 

6、生前贈与の特別控除(相続時精算課税)

生前贈与をする場合、毎年110万円の非課税枠を利用して暦年贈与する方法のほかに、2500万円までの非課税枠を利用する方法があります。それが「相続時精算課税制度」です。
相続時精算課税制度を利用するにあたっては、贈与者が60歳以上の父母または祖父母であることや、受贈者が20歳以上の者のうち贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人とされていることなど、適用対象者が限られていますが、贈与財産の種類や贈与回数等に制限はありません。

ただし、相続時精算課税制度についてのメリットとデメリットを考慮して、この制度を利用するかどうかを決める必要があります。

まず、メリットとして、2500万円という多額の財産を非課税で贈与できる(2500万円を超える部分は一律20%の贈与税が発生します)ので、相続時に相続税が発生しないと想定できる場合には、贈与税が非課税になる分節税できることになります。

また、賃貸マンション等の収益物件を贈与した場合、贈与後の賃料収入は受贈者の財産となり、その分、贈与者の財産の増加を防ぐことができるので、相続税の節税対策にもなります。
他方、デメリットとして、まず、一度相続時精算課税制度を選択すると、撤回することはできず、暦年贈与を選択することができなくなります。

次に、相続時精算課税制度を選択すると、贈与額の大小にかかわらず贈与税の申告をする必要があり、手間がかかるというデメリットもあります。
また、相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合には、「小規模宅地等の特例」を適用できなくなるというデメリットもあります。
そして、あくまで相続時精算課税制度は、生前贈与する時点で2500万円まで贈与税が非課税になるものの、贈与した人が亡くなった時点で遺産に加えて過去に生前贈与した財産にも相続税が課税される、という制度ですので、相続時に税金が発生する場合もあります。

さらに、登録免許税も違います。相続登記の場合、所有権移転登記の登録免許税は固定資産税評価額の0.4%にすぎませんが、生前贈与だと所有権移転登記の登録免許税は固定資産税評価額の2%です。また不動産取得税は、相続の場合は非課税ですが、土地の贈与だと固定資産税評価額の1.5%、家屋(住宅)の贈与だと固定資産税評価額の3%です。したがって生前贈与により不動産を取得した場合は、相続よりコストが高くつくというデメリットもあります。
相続時精算課税制度を利用できる場合なのか、利用したほうが有利なのか、などについても、税理士法人リーガル東京に、お気軽にご相談下さい。

 

7、遺言を利用した節税について

形式の整った遺言書があれば、遺産分割を円滑に行うことができ、家族間の無用な争いを避けることができるのはもちろんですが、相続税の節税にもつながります。
遺言書がない場合、遺産の分け方について相続人同士で話し合うことになります。これを遺産分割協議といいます。遺産分割協議が円満に行われれば、問題ありませんが、話し合いがつかないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになり、時間も労力もかかります。
さらに遺産分割協議がまとまらないと、税務上不利になることもあります。

例えば、配偶者が財産を相続する場合には大幅な相続税の軽減がありますが、遺産分割協議がまとまらない場合、この配偶者減額軽減の特例を受けることができません。
同様に、被相続人の居住用の土地や事業の用に供されていた土地の相続税評価額を下げられる特例の利用も、遺産分割協議がまとまらないと受けることができません。

また、遺産分割協議がまとまらなければ、遺産である土地の売却や物納もできず、相続税の納税計画が立ち行かなくなる可能性もあります。
そして、農業を営んでいる方の場合、農地に認められている納税猶予についても、遺産分割協議がまとまらないと利用できないので、場合によっては、その後の農業経営に悪影響を及ぼしかねません。
きちんとした遺言書さえ作っていれば、相続人にこれらの負担をかけることもありませんし、被相続人が望むとおりに遺産を分けることもできるうえ、相続税を節税する制度を利用することもできるのです。

ただし、遺言書は、公正証書であっても、いつでも撤回できますし、被相続人の死後、相続人間で遺言書の効力が争われることも度々あります。
相続税の節税対策、形式の整った遺言書の作成方法、民事信託(家族信託)の活用策など、相続問題に関する対策は、税理士法人リーガル東京に、お気軽にご相談ください。

 

8、不動産の有効活用・貸家建付地

一般的に、財産の種類として多いのは、預貯金、株式などの有価証券や、不動産です。
相続税は、亡くなった方の財産に課税されますが、課税される相続財産の評価額は、相続時の財産の評価額です。
預貯金や株式、不動産の相続時評価額をどのように決定するかについては、算定方法が定められています。
それらの算定方法によると、預貯金と株式は、実際の取引価格に近い金額が評価額になります。
他方、不動産の課税評価に利用される基準となる路線価は、一般的に公示価格の80%になるように定められているので、不動産の評価額は実際の取引価格より低く計算されます。

したがって、同じ額を預貯金や株式で持つより、不動産で持っていたほうが、相続税評価額が低くなり、節税が可能です。
さらに不動産は、その利用形態に応じて、評価上・税制上の特典があります。

例えば、自分で不動産を居住利用している場合の特典は、居住用小規模宅地等の評価減があります。

また、収益用に利用している場合の特典は、建物評価から貸家としての評価減、更地評価から貸家建付地としての評価減、などがあります。
具体的には、建物の評価額は、固定資産税評価額×1.0で計算された額ですが、貸家の場合の評価額は、他人の居住用であるため、借家権の付いている建物として、30%の減額計算がされます。

また、貸家の敷地の評価額も、他人が居住している建物の敷地である「貸家建付地」とみなされて、更地評価額から、借地権割合(土地によって割合が変わります)と借家権割合(全国一律30%)を乗じた率を控除して、計算されます。
このように、不動産には、預貯金や株式に比べ、用途に応じた様々な特典により評価減となるメリットがありますが、他方で、換金する場合に時間も費用もかかるというデメリットもあります。
財産をどのような形で保有するのが相続税対策になるのか、などについても、税理士法人リーガル東京に、お気軽にご相談ください。

 

9、収益物件の生前贈与

生前贈与の特別控除である相続時精算課税制度を利用する場合、現金の贈与をしても、相続税の節税にはなりません。なぜなら、相続時精算課税制度は、生前贈与時点では非課税にして相続財産の先払いを認めつつ、贈与した人が亡くなった時点で遺産に加えて過去に生前贈与した財産にも相続税が課税される、という制度であり、相続時に税金が発生する場合があるからです。

この制度を利用するメリットがあるのは、アパートなどの収益物件を贈与する場合などです。
アパートなどの収益物件を生前贈与しなかった場合、アパートの家賃収入は被相続人の財産として蓄積し、その分相続財産は増えます。
他方、収益物件を生前贈与しておけば、相続人はその後の家賃収入を得て、これを蓄えることができ、生活を安定させられる上に、将来の相続税等の納税資金等にも充てられるのです。

ただし、アパートを生前贈与する場合は、贈与者が賃借人から預かっている敷金相当額も同時に贈与することが大切です。それによって、以下のとおり、納税額が異なってくるからです。
賃貸人である贈与者には敷金返還義務がありますが、アパートを贈与した場合は敷金返還義務も受贈者に移転するので、「負担付き贈与」になります。「負担付き贈与」に該当する場合、財産を、債務も含めた時価で贈与したとみなされ、アパートについて借家権割合による減額も認められません。そのため、納税額はとなります。

(建物の時価-敷金債務-贈与税の非課税枠)×贈与税の税率Ex) (3,000万円-100万円-2,500万円)×20% = 80万円

他方、アパートを生前贈与する時に、贈与者が賃借人から預かっている敷金相当額の現金も同時に贈与した場合、税務上「負担付き贈与」に該当しません。この場合、アパートと敷金相当額の現金は贈与として、敷金は債務として、受贈者に引き継がせることになり、アパートについては借家権割合による減額が認められますので、納税額は、

 {建物の固定資産評価額×(1-借家権割合)+(敷金相当額の現金-敷金)-贈与税の非課税枠}×贈与税の税率Ex) 2,000万円×(1-0.3)+(100万円-100万円)-2,500万円 < 0

となり、敷金相当額を同時に贈与しなかった場合よりも、税負担額が軽くなります。
相続時精算課税制度を利用した収益物件の生前贈与につきましても、税理士法人リーガル東京に、お気軽にご相談下さい。

 

10、建物の修繕で節税

被相続人の生前に、老朽化した建物の修繕工事を行い、お金を使うことによって、相続財産を減らす、という相続税対策もあります。
もし、修繕工事が必要な家屋の修繕をしないまま、被相続人が亡くなってしまうと、建物自体が相続税の課税対象になることはもちろんですが、修繕工事のために残された金融資産も全額、相続税の対象になってしまいます。
他方、大規模修繕をすれば、従前の建物の固定資産評価額が上がる場合もあります。

しかし、修繕工事費用としてかかった金額の全額分、建物の評価額が上がるわけではありません。修繕工事費用の5割~7割の上昇で済むことがほとんどです。
建物の修繕を計画されているときは、被相続人が亡くなる前に修繕工事を完了させておくことが有効な節税になり、その結果、建物や土地も処分しやすくなります。不動産の価値を上げつつ相続税を節税できるという、合理的な方法です。

 

 

■相続開始後の節税方法

➀配偶者の税額軽減の利用

相続が開始した後の節税方法としては、まず、配偶者の税額軽減を利用することが挙げられます。これは、配偶者の財産取得割合を増やすことによって、納税額を減らす方法です。
具体的には、まず、被相続人の配偶者が取得した財産の課税価格が、配偶者の法定相続分以下の場合、配偶者の取得額にかかわらず、相続税はかかりません。
また、配偶者の取得額が法定相続分を超えていても、取得額が1億6000万円以下の場合、相続税はかかりません。

ただし、この方法を利用するためには、配偶者が法律上の配偶者であることや、原則として相続税の申告期限までに相続人間で遺産分割が確定していることが必要です。
そして、課税対象額が配偶者控除の範囲内であれば自動的に控除が適用されるわけではなく、配偶者控除の適用を受けるためには、相続税の申告書に、遺産分割協議に関する書類の写し等の必要書類を添付して税務署に提出する必要もあります。

次で説明する二次相続まで考えた場合、配偶者の税額軽減を利用しない方が節税できるケースもあります。
配偶者の税額軽減の利用の方法や、具体的な遺産分割の方法、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまりそうにない場合の対処法などについても、税理士法人リーガル東京にお気軽にご相談下さい。

➁二次相続まで考えて遺産分割

二次相続とは、最初の相続(一次相続)で残された配偶者が亡くなったときに起こる2回目の相続のことです。
二次相続まで含めた節税方法を考えておかないと、トータルで余計に相続税を支払うことになってしまう可能性もあります。

なぜなら、例えば、父と母、子供2人の4人家族の場合で、父が先に亡くなり(一次相続)、次に母が亡くなった場合(二次相続)、仮に一次相続と二次相続で遺産額が同じであったとしても、二次相続では相続人の数が1人減る(一次相続では母と子2人、二次相続では子2人)ため基礎控除額が減ること、また、二次相続では配偶者の税額軽減の特例を利用できないことなどから、一次相続よりも相続税が高くなるからです。
したがって、どのように遺産分割をすれば、トータルの税負担がより少なくなるのかを、あらゆる場合を想定し検討する必要があります。

例えば、一次相続で母が父の自宅を相続した場合、配偶者の税額軽減の利用で相続税がかからないことが多いため、小規模宅地等の特例を利用するメリットがあまりありません。

他方、一次相続で父と同居していた子が父の自宅を相続した場合、一定の要件のもと小規模宅地等の特例によって子の相続税が軽減される上、母は別の遺産について配偶者の税額軽減を利用でき、さらに、二次相続では自宅が既に子のものとなっているため遺産額も少なくなります。
二次相続も踏まえた節税のための遺産分割方法などについても、税理士法人リーガル東京にお気軽にご相談下さい。

➂土地を分筆して評価を下げる

遺産である土地を複数の相続人で相続する場合、土地を分筆して、各土地を別々の相続人が相続することが、節税につながる場合もあります。
具体的には、分筆により地形や接する道路や路線価が変わる場合で、かつ、分筆後の所有者が別々である場合です。

例えば、間口が狭く、奥行きが長い土地の場合、間口の半分で土地を分けると細長い土地になってしまうため、手前の区画と奥の区画(進入路幅をもうけた、いわゆる旗竿地)の2つに分けることがあります。そうすると、奥の区画(旗竿地)は、地形が不整形地となり、土地の評価が下がるため、相続税も下がることになります。

また、二方の道路に面した角地などを分筆する場合も、角地の面積が減り、一方の道路のみに面する土地ができることによって路線価の違いが生じて土地の評価が下がるため、相続税が下がります。
節税のためにはどのように土地を分筆するのがいいのか、などにつきましても、税理士法人リーガル東京にお気軽にご相談下さい。

➃土地の評価で節税

遺産の中に、著しく広大な土地(広大地)がある場合、広大地に該当する土地の評価を、通常の路線価に広大地補正率を掛けて算出するため、評価減になり、節税につながります。
広大地が評価減になる理由は、著しく広大な土地は都市計画法の開発行為を行う場合に、道路や公園などの公共公益的施設の費用負担が必要になるためです。

ただし、大規模工業用地やマンションの敷地用地に該当する土地には、広大地評価を適用することはできません。
遺産である土地が広大地にあてはまるかどうかは、周辺地域の標準的使用の状況によって判断されます。

例えば、戸建住宅とマンションが混在している地域において、戸建住宅用の広大地といえるのか判断が難しい場合もありますが、明らかにマンション用地に適していると認められる土地を除いては、広大地の評価が適用できる可能性が高いです。
広大地評価減で節税する方法などにつきましても、弁護士法人リーガル東京にお気軽にご相談下さい。

➄小規模宅地等の評価減特例の利用

被相続人や被相続人と同一生計であった被相続人の親族が、事業や居住のために使っていた宅地を相続する場合、一定の要件のもと、小規模宅地等の特例を利用することにより、その宅地の評価を80%減額でき、節税できます。
この特例を利用するための主な要件は、以下の通りです。

1)まず、相続前の用途の要件として、相続開始の直前において、被相続人や被相続人と同一生計の親族が、事業や居住のために使っていたことが必要です。

例えば、別荘などの宅地については、この特例を利用することはできません。また、宅地が二つ以上ある場合には、主としてその居住のために使っていた一つの宅地のみに利用できます。
二世帯住宅の場合、建物の構造上建物の中で行き来ができない場合でも、税制改正により、平成26年1月1日以降に相続開始があった場合は、建物が区分所有登記(それぞれの住んでいるところをそれぞれの所有として別々に登記)されていなければ、一定の要件のもとで適用が受けられるようになりました。

2)次に、相続後の利用状況の要件として、相続税の申告期限(原則として相続後10か月)までの間、その宅地の取得者がその土地を継続して利用していることが必要です。

ただし、被相続人や被相続人と同一生計の親族が居住のために使っていた宅地を、被相続人の配偶者が相続する場合には、この要件は不要です。

3)さらに、減額対象となる面積の要件として、事業用宅地については400㎡、居住用宅地については330㎡という上限が定められています。

居住用宅地については、相続開始日が平成26年12月31日までの場合は240㎡の上限でしたが、税制法の改正により、相続開始日が平成27年1月1日以降の場合は330㎡の上限に拡大されました。

4)そして、原則として、相続税の申告期限までに相続人の間で遺産分割が確定していることも必要です。但し、遺言等で不動産を誰にどういう形で相続
(または遺贈)させるか確定していれば、他の要件が整えば、小規模宅地の評価減特例の利用ができます。

この特例の適用を受けるためには、特例の適用によって相続税額がゼロになる場合でも、相続税の申告手続が必要です。そして、相続税の申告書を提出する際、遺産分割協議に関する書類の写し等を添付する必要があります。

建物等の修繕による節税等につきましても、税理士法人リーガル東京は対応可能です。

 

■ 相続税を納税するときの節税方法

1、更正の請求

相続税申告をした後、税額を多く計算していたことに気づいた場合、「更正の請求」をすることにより、相続税の還付を受けることができます。
更正の請求ができる期間は、法定申告期限から5年(相続開始から5年10か月)以内です。
ただし、以下のような特別な事情がある場合は、更正の請求ができる期間が、そのことを知った日から4か月以内となっており、上記の5年10か月という期間を過ぎていても可能となります。

1)申告後に遺産分割協議がまとまり、申告額が多すぎたことが判明した場合
2)相続人の廃除、認知などがあり、相続人に変更が生じた場合
3)遺留分減殺請求により相続財産から返還した場合
4)遺贈をする旨の遺言書が見つかった場合
5)未分割の財産が分割されたことにより、軽減措置や特例が適用され、相続財産の課税価格が先に申告した額から減少した場合

修正申告(追加納税の必要があった場合)や、期限後に申告書を提出した場合でも、期限内であれば、更正の請求をすることができます。
相続人が複数いる場合、全員の合意が得られなくても、相続人1人だけでも、更正の請求をすることができます。
相続財産の中に不動産などがあった場合、節税の知識がないままに申告・納税してしまうことが多々あります。そのような場合、財産評価をし直して更正の請求をすることで、相続税を還付してもらうことができるのです。
既に相続税の申告や納税をしてしまったとしても、何か節税方法が使えたのではないか、という場合も、ぜひ、リーガル東京にお気軽にご相談ください。

 

2、農地の納税猶予

死亡の日まで農業を営んでいた方が死亡したため、相続で農地を取得し、相続人が農業を継続する場合などには、一定の要件のもとで、農地にかかる相続税の納税が猶予されるという特例を利用することができます。
納税猶予を受けるためには、相続税申告書の提出期限までにその農地を取得し、かつ農業経営を開始するなどの要件が必要です。そのため、申告期限までに、遺言や相続人間の遺産分割協議により、相続が確定していることが必要です。
また、相続税の申告書とともに、農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供することが必要であるため、申告書には、納税猶予に関する適格者証明書や担保関係書類など一定の書類を添付することが必要です。
そして、納税猶予期間中は、相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨等を記載した継続届出書を提出することも必要です。
この農地等納税猶予税額は、次のいずれかにあたる場合、免除されます。

1)この特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
2)この特例の適用を受けた農業相続人が農地の全部を農業後継者に一括生前贈与し、贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける場合
3)この特例の適用を受けた農業相続人が、相続税の申告書の提出期限から20年間農業を継続した場合

ただし、免除前に、この特例の適用を受けている農地が譲渡されたり、農業経営を廃止したり、継続届出書を提出しなかったりした場合などには、納税猶予は打ち切られ、利子税を付けて納税しなければならなくなることもあります。
したがって、将来を見据えた上での慎重な選択が必要ですが、農地等の納税猶予を受けられれば有効な節税対策になります。
特例を受けるための要件にあてはまるかどうか、特例を受けるためには具体的にどのような手続をとればよいのか、などについても、リーガル東京にお気軽にご相談下さい。

 

3、非上場株式の納税猶予

会社のオーナーが亡くなり、そのオーナーが大きな価値のある株式をもっていた場合、その会社の株式にかかる多額の相続税を現金で支払うことが困難な場合もあります。そのような場合、非上場株式の納税猶予という特例を利用できる場合があります。

この特例は、中小企業が、一定の要件を充たして次世代に事業をバトンタッチする場合に、相続税や贈与税の納税が猶予され、次世代である経営承継相続人等が死亡した場合などには、その猶予税額の全部または一部が免除される、という特例です。

特例を受けるための要件は?

まず、会社の主な要件としては、会社が円滑化法の認定を受けた中小企業者にあたること、などが必要です。

次に、先代経営者である被相続人の主な要件としては、会社の代表者であったこと、及び、筆頭株主であったこと、などが必要です。
そして、経営承継相続人等の主な要件としては、相続開始直前に役員であったこと(被相続人が60歳未満で死亡した場合等を除く)、相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表者になること、会社の筆頭株主になること、相続税の申告期限まで特例の適用を受ける非上場株式等の全てを保有していること、などが必要です。
このような要件を充たした上で、この特例を受けるためには、特例を受ける旨を記載した相続税の申告書を申告期限までに提出するとともに、その申告書に特例の適用を受ける非上場株式等の明細や納税猶予分の相続税額の計算書などを記載した書類を添付する必要があります。

また、申告書の提出期限までに、納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要もあります。
さらに、納税猶予期間中も、申告期限後の5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに、納税猶予の継続届出書を所轄税務署に提出する必要があります。

ただし、申告期限後5年以内に経営承継相続人等が代表者でなくなった場合や、申告期限後5年間の平均で相続開始時の雇用の8割を維持できなかった場合などは、納税猶予は打ち切られ、利子税を付けて納税しなければならなくなることもあります。
まだまだ歴史の浅い制度ですが、この特例が出来た当初よりは、税制改正により大幅に条件が緩和されており、業績のよい中小企業を経営する方々には、是非利用して、次世代へと会社を継続させてほしいものです。
非上場株式の納税猶予の特例を受けられる場合にあたるのか、名義株の対策はされているのか、などにつきましても、リーガル東京にお気軽にご相談ください。

 

4、取得費加算の特例利用

土地や建物を売却して納税する場合、一定期間内に売却し、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することによって、譲渡所得税が軽減されるという特例を利用することもできます。
特例を受ける要件は、以下のとおりです。

1)相続や遺贈により財産を取得したものであること
2)その財産を取得した人に相続税が課税されていること
3)その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

取得費に加算する相続税額は、相続または遺贈の開始した日により、次のアまたはイの計算式による金額になります。

 

ア 平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得した財産を譲渡した場合(譲渡財産ごとに計算)

(取得費加算額)=(相続税額)×(譲渡した財産の価額)/{(課税価格)+(債務控除額)}

 

イ 平成26年12月31日以前の相続または遺贈により取得した財産を譲渡した場合

➀土地等を譲渡した場合

(取得費加算額)=(相続税額)×(全ての土地等の価額の合計額)/{(課税価格)+(債務控除額)}

➁土地等以外の財産(建物や株式など)を譲渡した場合

(取得費加算額)=(相続税額)×(譲渡した建物や株式などの価額の合計額)/{(課税価格)+(債務控除額)}

この特例を受けるためには、確定申告をすることが必要です。
確定申告書には、相続税の申告書の写し、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書、譲渡所得の内訳書や株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書などの添付が必要です。
このように、相続税の納税のために土地などを売却する場合は、相続税の納税が必要な相続人が取得することで、この特例を適用でき、譲渡税の節税につながります。
取得費加算の特例が利用できるかどうか、利用する場合の申告方法、などにつきましても、リーガル東京にお気軽にご相談ください。

 

5、延納・物納

原則として、相続税は、申告期限までに現金で一括して納めなければなりません。期限内に納めないと、原則年14.6%(2か月以内は原則7.3%)の延滞税が課されてしまいます。
しかし、相続財産が不動産の場合など、現金化に時間がかかり、現金での納税が難しい場合もあります。
そのような場合、「延納」という制度を利用することができます。
以下の全ての要件を充たした場合、相続税を最長20年の分割払いで支払うことができるのです。

1)相続税が10万円を超えること
2)金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
3)延滞税及び利子税の額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合、担保は不要。)
4)延納しようとする相続税の納付期限または納付すべき日(延納申請期限)までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して、税務署長に提出すること

延納を選択した場合、分割した相続税額にプラスして、利子税も納税しなければなりませんので、返済額をどの収入から捻出するのかなど、十分に事前に検討する必要があります。

延納を選択したくても、金銭による納付がやはり困難である、という場合には、最後の手段として、有価証券や土地などで納税する「物納」という制度を利用することができます。
物納を利用できる要件は以下のとおりです。

1)延納を選択しても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること
2)物納できる財産があること
3)物納しようとする財産が、管理処分不適格財産(係争中の財産、抵当権がついている財産など)にあたらないこと、及び、物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと
4)物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること

延納や物納を利用できる場合にあたるのか、利用できるとして、どのように納税するのか、などについても、リーガル東京にお気軽にご相談ください。