1、よくある家族信託の相談例

家族信託をアドバイスする相談例を、ご紹介します。

(1)両親が将来認知症などになったときの財産管理についてのご相談

両親が認知症などの病気になり、判断能力がなくなると、以下の困った問題が生じます。

▲銀行借入して両親所有のアパートを建て替えたいのにできない・・
▲賃貸併用住宅を大規模修繕したいのに契約締結できない・・
▲両親所有の不動産を売買したいのにできない・・・

このような判断能力がない状態になったときには、成年後見制度の利用をアドバイスされることが多いようです。
けれども、家族が当然に後見人になれるわけではなく、弁護士等の他人がなるのが通常です。
法定成年後見制度は、制度の硬直化で長期に財産が固定化される可能性が高くなります。

また、被後見人となった両親は、全ての財産についての管理処分を後見人に委ねることになり、家族の希望通りに財産の管理処分ができる保証がありません。
これに対し、家族信託(民事信託)ならば、受託者は信託の目的の範囲内で、自由に委託者財産の管理処分ができます。
両親が元気なときに、任意後見契約を信頼できる家族と結ぶ方法もあります。

けれども判断能力がなくならないうちに、財産管理を信頼できる親族に委ねた方が良いケースが少なくありません。

そこで、問題の有力な解決策の一つが、家族信託(民事信託)です。
両親が認知症などにならない(判断能力がある)うちに、住宅や賃貸マンション等の不動産を、家族信託すると、両親(所有者)は、財産(不動産)管理の煩わしさがなくなります。
家族信託することにより、建物請負契約、担保設定契約、売買契約などの諸契約が、容易に締結できます。

(2)財産の承継先についてのご相談

●自分の死後、相続のことで家族が争ってほしくない。
●二次相続以降の財産の承継者を決めておきたい。

上記のご相談が少なくありません。
財産の承継先については、遺言で定めることができますが、遺言者が、何回でも書き換えられ、家族で揉める原因になることがあります。

けれども家族信託(民事信託)は、委託者が信託の解除や内容変更をしたくても、受託者受益者全員の合意がなくてはできません。
信託契約で解除できる場合を制限することもできます。

したがって相続開始後の受益者に指定された人とっては、家族信託は、非常に有益です。
家族信託の内容次第では、信託している財産については、遺産分割協議が必要でないので、信託された財産について、相続トラブルを避けられます。
遺言では二次相続時、三次相続時の財産承継者を決められませんが、家族信託は、相続人が亡くなった場合の次の受益者を指定することができます。相続人でない人も受益者にできます。

すなわち、家族信託では、甲が亡くなった時の信託財産の受益者(財産承継者)を乙と決め、さらに乙が亡くなった時の信託財産の受益者を丙
と定め、また丙が亡くなった時の信託財産の受益者を丁と定めることもできます。

(3)節税についてのご相談

家族信託をしたことで、直ちに節税に結びつくわけではありませんが、相続税や所得税などの節税の一方法として、ご提案することがあります。

相続税の節税としては、信託された財産についても、小規模宅地等の評価減特例などの相続税節税の制度が利用できます。

生前に収益物件を信託し、信託手数料を受託者(親族または同族会社)に支払う形をとれば、所得の分散になり、所得税を節税できます。
不動産信託の場合、相続登記費用は受益者変更登記だけですので、通常の相続登記より登記免許税が大幅に安くできます。
遺言信託で銀行などに遺言執行を依頼すると高額な遺言執行費用がかかります。しかし遺言代用信託では高額な執行費用は必要ありません。

 

2、家族信託とは、どういうものか。

家族信託とは、具体的にどういうものか、説明します。

(1)「家族信託(民事信託)」とは、ある人が自分の財産(不動産・株式・預金等を信頼できる人(家族や同族会社など)に託して、財産の管理・処分を任せる契約です。
これに対し、営利を目的とする信託を「商事信託」といいます。
「民事信託」は、営利を目的としない信託で、自分の財産を家族に託すケースが多いので「家族信託」とも呼ばれています。

(2)「家族信託(民事信託)」は,所有権を「信託受益権」の形に変えて、不動産などの財産について、管理処分権限だけを受託者に集約させるものです。
土地を家族信託した具体例で、説明します。

(土地の家族信託 具体例)
東京都内に土地を所有する東京太郎が、長男の東京一郎を受託者、所有者東京太郎を受益者として、該土地を家族信託しました。

Family trust

東京一郎を受託者、東京太郎を受益者として、東京太郎が所有する土地を家族信託すると、下記のように登記簿に信託契約の主な内容が公示されます。

Family trust_1

(3)家族信託(民事信託)の類型として、「遺言代用信託」というものがあります。

「遺言代用信託」とは、ある人(委託者兼受益者)が信頼できる法人または個人に対して、財産(不動産や株式等)を移転し、委託者の生前中は自ら
を受益者としますが、委託者死後は、自らの親族(子や孫など)を受益者とする信託契約です。

遺言代用信託は生前契約であり、遺言とは違いますが、特定の財産について死後の承継者を決めておくことで、遺言と同様に、相続対策になります。
遺言代用信託された財産については、遺産分割協議の必要がなくなりますので、信託契約で指定された受益者が受益権という形で遺産を相続できます。
したがって、不動産について家族信託をしておけば、相続税申告で小規模宅地等の評価減特例などの相続税節税の制度が利用できるメリットがあります。

(4)民事信託(家族信託)の類型として「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」というものがあります。

「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」は、受益者の死亡により、他の者が新たな受益権を取得する旨の定めのある信託です。
信託契約で、第一次受益者を夫、夫死亡後は妻を第二次受益者に指定し、妻死亡後は夫の弟を第三次受益者に指定し、さらに夫の弟死亡後は甥(弟の子)を第四次受益者に指定しておきます。
30年経過後、甥が生存していれば、その財産を相続できます。

以上のような内容を、遺言ですることはできません。
「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」なら、二次相続や三次相続における財産承継者を決めておけますので、相続対策になります。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託している財産については、遺産分割協議が必要ありません。
不動産について家族信託をしておけば、小規模宅地等の評価減特例などの相続税節税の制度が利用できます。

 

3、家族信託と税金

(1) 所有者が生前において、不動産などの財産を家族信託する場合は、委託者=受益者という形が、税金面からみて、お勧めの形です。
生前において、不動産などの財産を、子や孫を受益者として信託すると、贈与税等が、課税される恐れがあるからです。

例えば、祖父甲が孫乙(長男の子・未成年)のために土地付アパートを、二次相続対策のつもりで、家族信託したとします。
長男が受託者として孫乙(受益者)のためにアパート管理します。
土地付アパートは、時価約1億円・相続税評価額約7000万円であり、抵当債務額約7000万円です。
この場合は以下となります。

●祖父甲にかかる税金⇒ アパートと敷地の受益権を孫乙に負担付贈与したことになり、対価(抵当債務額)と取得価額(帳簿価格)との差額(利益)に譲渡所得税が課税された上、建物部分については消費税が課税されます。
●孫乙にかかる税金 ⇒ 約1億円(時価)-約7000万円(抵当債務額)=約3000万円

孫乙は祖父甲から贈与された受益権について約3000万円部分につき贈与税が課税されます。
注)負担付贈与なので時価評価

(2)賃貸マンション1棟を所有する甲個人が、甲の生前は、自らを受益者、甲の死後は長男乙を第2受益者とし、同族会社を受託者として、賃貸マンションを家族信託した場合、

➀マンションの賃料収入は、甲の生前は甲の所得となりますので、甲が賃料収入について所得税確定申告をします。
なお通常の確定申告と異なり、信託にかかる参考となる事項を記載した明細書の添付が必要になります。
受託者となった同族会社は、賃貸マンションの固定資産税などの管理費がかかりますので、そのような諸経費負担や信託手数料を、信託契約で定めれば、甲の経費となり、甲の所得税が節税できます。
なお受託者となった会社は、信託計算書・信託調書等の提出が必要になります。

➁甲の死後、乙が賃貸マンションの受益権を相続した場合、受益権の相続税評価額は、不動産である賃貸マンションを相続したと同じ相続税評価額になります。
➂信託契約が終了して、不動産の所有権が受益者に移転するときは、所有権移転登記をしますので、登録免許税や不動産取得税がかかります。
受益者が委託者の相続人の場合には、不動産を相続したと同様になりますので、不動産取得税はかかりません。

 

4、家族信託の手続費用

(1)家族信託(民事信託)は比較的新しい制度ですので、信託や相続に詳しい専門の弁護士に相談することが重要です。
弁護士法人リーガル東京と税理士法人リーガル東京では、家族信託や遺言等、相続問題に精通した弁護士・税理士による無料相談を行っております。

(2)手続費用は、以下のとおりです。

➀家族信託(民事信託コンサルティング):信託財産価格(固定資産税評価額)の1% 最低額30万円(消費税別)
➁信託契約書の作成:30万円(消費税別)から
➂不動産信託の登記手続:申請手続1件につき金10万円(消費税別)
※登記手続には登録免許税等の実費が別途かかります。

家族信託を依頼された方には、遺言書診断を無料で実施します。
家族信託をすることになると、既に公正証書遺言を作成している場合、その見直しが必要になります。
また作成済の遺言書が相続対策として完璧なものかどうかを、家族信託をよい機会として、チェックされることが大切です。

なお遺言書診断の結果、遺言書を新たに作成されることになった場合、
遺言書文案を弁護士法人リーガル東京に依頼されるときは、別途手数料が発生いたします。

監修者

氏名(資格)

小林 幸与(税理士・弁護士)

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特に相続分野では、相続対策・相続トラブル解決・相続税申告・相続手続処理などの相続に関わるワンストップサービスを得意としています。