Q.親が自宅から老人ホームに入居した場合、自宅土地について小規模宅地の評価減特例を利用できなくなり、相続税の負担が増える場合があると聞きました。どういうことでしょうか?

A.「小規模宅地等の評価減の特例」という制度は、被相続人(亡くなった人)が、居住していた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を充たす場合には、当該土地の相続税評価額を80%から50%まで減額を認めるものです。

例えば、父親甲が、所有する宅地上に建物を所有し、その建物を自宅として居住していた場合に、父親甲死亡により相続が開始したときは、該宅地の相続税評価額が5000万円でも、小規模宅地の評価減特例の要件を充たせば、該宅地の相続税評価額を1000万円に減額できるというのです。

居住用宅地の相続税評価額を80%まで減額できるのは、被相続人が当該宅地に建っている建物に居住していることが基本的に必要とされています。
そこで老人ホームに入居中に亡くなったら、小規模宅地の評価減特例を活用できるのか、問題になります。

 

(1)平成25年12月31日までに相続が開始されたケース

老人ホームに被相続人が入居していたケースについて、法令上の根拠規定はありませんでした。
しかし国税庁は、ホームページ上で次の情報を【被相続人が老人ホームに入居したため、元の居住用が空き家になったことを前提としてのみ】、以下のように公表していました(留守家族がいる場合には言及していませんでした)。

平成25年7月1日当時の法令・通達に基づいての見解です。
➀被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったものと認められること。
➁被相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと。
➂入居後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。
➃その老人ホームは、被相続人が入所するために被相続人又はその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。

以上➀~➃の要件があれば、平成25年12月31日以前の相続開始でも「被相続人が家屋に居住」の要件を、認めていたようです。

 

(2)平成26年1月1日以降に相続が開始されたケース

平成26年1月1日以降は、老人ホーム入居の場合について、正式に適用範囲を拡大する改正をしました。
平成26年改正後は「被相続人が次に掲げる施設に入居又は入居をしていたこと。」と規定しました。「(したことでない)に注目」

すなわち、入居または入所した段階では「要支援または要介護、もしくは障害支援区分の認定を受けていた」状態ではなかったが、その後状態が悪化し、相続開始時点では「要支援または要介護、若しくは障害支援区分の認定を受けていた」状態であった場合も含まれるということにしたのです(措通69の4‐7の2)。
相続開始時点では介護認定申請中で、申告期限までに認定された場合でも該当すると考えられます。

これは平成25年1月に公開された税制改正の大綱の段階では言及しておらず、かつその後平成25年5月に発表された財務省の資料にもなく、国税庁の上記情報の(2)と(4)が削除されたとしか解説がなかったため、分かりにくいのですが、大幅に緩和されました(措令40の2➁一・二)。

適用時期入所等の段階相続開始の段階根拠法令・情報等
平成25年12月31日まで老人ホーム入所の段階で介護が必要国税庁のHP上の情報
平成26年1月1日から老人ホーム入所の段階では健常者でもよい相続開始時点で介護等の認定必要(緩和された。)措令40の2②
認定を受けていた者…入所又は入居していたこと

 

(3)被相続人が老人ホームに入所する前に同じ家屋に同居(ほぼ生計一)または同じ1棟の建物の別の家屋に別居(生計一要件あり)していた留守家族が居たが、その後被相続人が老人ホームに入所し、相続開始時点では生計別(当然別居)となったとしても、その建物に引き続き居住していた(生計別)親族も「被相続人等」の範囲に含むと緩和しました。

すなわち、例えば、父親が老人ホームに入所しても、同じ家屋に同居している長男が引き続き該家屋に居住していれば、他の要件を充たせば、小規模宅地(特定居住用宅地)の評価減特例の適用を、認めるということです。

監修者

氏名(資格)

小林 幸与(税理士・弁護士)

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